QCと略することも多い。顧客の要求を満足させる品質をもった製品を作り出し,顧客に提供する機能をいう。品質管理という言葉が用いられるようになったのは第2次大戦中アメリカにおいてである。それ以前において工業製品の品質を管理するという仕事がなかったわけではない。大戦前においてもドイツのカメラ,スイスの時計などの品質は世界的に定評があったところであり,品質確保のためにいろいろな努力,くふうがなされていた。しかしこれらの製品の品質を支えていたのは経験豊富な専門家による設計,高度の技能を持つ熟練工による作業であった。
品質管理は第2次大戦中アメリカで生まれた。第2次大戦の特徴の一つは,これまでのどの戦争とも比べものにならない大量の物資が投入されたことと,これらの多くは高度の工業製品で,その品質の優秀さが戦局を支配したことである。物資の需要は戦争の激化に伴って急増し,その供給は専門の軍需工場だけでなく,平和時には民間向けの製品を作っていた工場でも行われた。また専門工場においても製造ラインの増設,未経験作業者の投入が行われ,物資の供給源に種々雑多な要素が入り込んできた。このような状況において要求に合致した製品を獲得するために積極的な品質管理活動が必要となり,品質確保のためにいろいろな対策が講じられた。
対策の一つとして開発された手法に抜取検査法がある。経験の少ない工場や,新しい作業者によって作られた製品の品質は一般に不安定であり,品質確保のためには検査を強化しなければならない。一方,量の増加に対しては検査時間の短縮が必要となる。これらの相矛盾する問題を克服する手段として生み出されたのが抜取検査法である。これは工業生産に数理統計学が応用された画期的な例であった。抜取検査は不適合製品の排除には有効な方法であるが,供給される製品の品質が全体として良くなければ,検査になかなか合格せず買手側において必要なものが必要な時期に購入できなくなる。これでは買手側も困るわけで,いかに不良品を排除するかではなく,供給側でいかに不良品を作らないかが基本的な問題である。すなわち品質管理のねらいは検査による不良品の除去でなく,製造において不良品を作らないということでなければならない。
しかし,未経験者の多い状況にあっては不良品防止を熟練作業に期待することはできず,これを克服する手段として生み出されたのが管理図を中心とする統計的品質管理の手法である。不良品の発生は品質特性のばらつきの結果である。このばらつきの原因は使用する材料およびその加工方法のばらつきにある。これらをまったく同一の条件に押さえることができれば製品品質のばらつきはなくなり,不良品はなくなる。そこで品質特性のばらつきに着目し,そのばらつきが材料や製造工程の条件のどのばらつきに対応するかを統計的に解析し,大きな影響を与えている要因を標準化により安定させ,品質特性のばらつきを減少させることによって不良を防止するというのが統計的品質管理の考え方である。この考え方は熟練作業を客観的な統計データと標準化作業で置きかえるもので,工業製品の品質管理手法として画期的なものである。この考え方はすでに1920年代にベル電話研究所のシューハートW.A.Shewhartにより提案されていたものであるが,第2次大戦中に軍の強力な指導により普及発展した。
品質管理は戦後軍需産業のみならず,民需産業にも適用されるようになり,その方法も進歩してきている。当初品質とは〈規格にいかに合致しているか〉を表すものと考えられ,検査,製造部門を中心にその適用が行われた。軍など顧客側において製品規格が設定される場合はこれでよいが,自動車,カメラ,テレビなどの製品は不特定多数の顧客を対象とする製品で供給者側において適切な製品規格が作られなければならない。製品規格が不適切であれば,製造,検査部門においていかに規格通りのものが作られても市場で売れる製品とはならず,その活動はきわめて効率の悪いものとなってしまう。現在においては品質とは〈顧客の要求にいかに合致しているか〉を表す尺度と考えられており,製造業のみならず,ホテル,銀行などのサービス業においても品質管理が行われるにいたっている。
執筆者:久米 均
品質管理は第2次大戦後,アメリカから日本へ導入された。1956年ごろより,物を作っている現場の品質管理が重要で,これを充実しようというねらいで,監督者に対する品質管理教育が始められ,62年には《FQC》誌が創刊され,それとともにQCサークル活動が創設され,しだいに普及した。QCサークルは職場の末端で働いている人たちを中心とした小集団活動で,職場の管理・改善を継続的に行っていく活動である。1960年代の後半に至り,日本商品の品質向上はめざましく,世界市場で高く評価されるものが増えてきた。この間日本的品質管理のやり方が確立されたが,その特徴は(1)全社的品質管理company-wide quality control(CWQC。総合的品質管理total quality control(TQC)ともいう)が実行されていること,(2)各階層,各分野の人々に対する品質管理教育が社内外で徹底して行われている,(3)QCサークル活動の実施,(4)社内外の人々による企業の品質管理診断の実施,(5)全国的な品質管理推進活動,(6)統計的手法の普及・活用,などである。
執筆者:今泉 益正
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製品の内容のよしあしの程度を意味するものが品質であり、できるだけよい品質をつくるように、またできるだけ標準の品質にばらつきが生じないように管理活動を行うことが品質管理である。QCと略称される。一般に、品質管理は次のような手順によって実施される。(1)要求される品質標準を決める。(2)その品質標準を達成するための方法を決める。(3)製品の検査結果を品質標準と比較して、評価する。(4)製品に相違があれば、品質標準にあうような対策を施す。とくに、手順(3)では、製造された品質の平均値や標準偏差などを測定して、生産工程の状態が正常であるかどうかを調べる統計的手法として、各種の管理図が広く用いられる。
管理図法は、製品の寸法や不良率などの目標とする値を中心線として、これを挟む2本の線を考え、製品の寸法や不良率のバラツキがこの2本の線の範囲を越えたかどうかを見やすくするために利用される。この2本の線を越えた場合、そのバラツキの原因が偶然なのか、工程内に異常が発生しているのかを調べることになる。この2本の線は管理限界線とよび、中心線から値の大きいほうを上方管理限界線、また中心線から値の小さいほうを下方管理限界線とよぶ。この中心線からの値は、すでにつくられたものからの測定データを解析することによって統計的に決める。
品質管理の対象とする寸法、不良率など測定データの性質により、種々の管理図が開発されている。管理図法の区分としては、3σ(シグマ)法が一般的によく用いられており、またこの3σ法も、測定するデータの性質により、寸法、不良率のほかに、重さ、強さ、成分、純度などの計量値による分野と、不良率、返品個数、クレーム件数などの計算値による分野に分けられる。計量値に対する代表的な管理図法としては、(平均)―R(範囲)管理図があり、計算値を対象とするものとしては、Pn(不良個数)管理図などがある。
なお、統計的手法を中心に普及してきた品質管理も、経営トップによる品質監査から製造現場のQCサークル活動に至るまで、経営のツールの一つとしての役割が認識されてきた。さらに、今日では社会的な品質までをも含めた幅広い総合的品質管理total quality control(TQC)へと発展している。
[玄 光男]
『安藤貞一・松村嘉高・二見良治著『統計的品質管理入門』(1981・共立出版)』▽『伊藤通展・前野敏彦著『パソコンによる品質管理』(1984・日本経済新聞社)』
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出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
… 企業内のおもなサークル活動の流れには次のようなものがある。(1)QCサークル 製品の品質の維持と向上をはかる科学的な品質管理quality controlの手法をマスターするため,職長が中心となってつくられたのがQCサークルである。品質管理そのものはアメリカが発祥の地であるが,日本ではそれが伝統的な集団主義と結びつき,1962年,主要な企業で導入が始められて以来,年ごとに関心が高まった。…
…製品の品質管理に用いられる図表。近代科学が発展を遂げた19世紀の後半において,物を作る方式として大量生産の技術が研究され始め,標準化の原理が生みだされた。…
…企業制度論ないし経営形態論は,資金調達の様式の差異にもとづく会社制度や企業間の結びつきの諸形態を問題にする。生産活動の仕組みについては,生産管理,品質管理などの領域が発達している。マーケティング論は,市場での販売と企業内の生産との関係を問題にしている。…
… 企業内のおもなサークル活動の流れには次のようなものがある。(1)QCサークル 製品の品質の維持と向上をはかる科学的な品質管理quality controlの手法をマスターするため,職長が中心となってつくられたのがQCサークルである。品質管理そのものはアメリカが発祥の地であるが,日本ではそれが伝統的な集団主義と結びつき,1962年,主要な企業で導入が始められて以来,年ごとに関心が高まった。…
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