問注(読み)モンチュウ

デジタル大辞泉 「問注」の意味・読み・例文・類語

もん‐ちゅう【問注】

《問うてしるす意。「もんぢゅう」とも》訴訟原告被告を取り調べて、その言い分を記すこと。また、訴訟の対決裁判
六波羅にて―すべきに定まりにけり」〈著聞集一六

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精選版 日本国語大辞典 「問注」の意味・読み・例文・類語

もん‐ちゅう【問注・問註】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「もんぢゅう」とも。問うて注(しる)す意 ) 原告と被告とを取り調べて、両者の言い分をしるすこと。また、訴訟の対決。裁判。
    1. [初出の実例]「問注太宰府貢物使田口為友并藤井国方等申詞記」(出典:朝野群載‐六・応徳二年(1085)四月一四日・官庁問注記)
    2. 「我と問注(モンチウ)にまけて返りしかば」(出典:米沢本沙石集(1283)三)
    3. 「問註 モンヂウ」(出典:易林本節用集(1597))

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改訂新版 世界大百科事典 「問注」の意味・わかりやすい解説

問注 (もんちゅう)

〈審問注記〉の意で,平安から鎌倉室町時代にかけて,官司が当事者から事情聴取をすることをいった。問注の結果を記したものを問注記という。源頼朝は鎌倉幕府創立の当初に,侍所,公文所(のちの政所)とともに,訴訟事務を取り扱う機関を設けて,これを問注所と称した。問注所の管轄内容は時に応じて変化するが,その名称は室町幕府にも引き継がれた。鎌倉・室町幕府における訴訟手続では,原告と被告とは,裁判所を通じて書面による応酬をした後,裁判所に出頭して口頭弁論を行うことになっていた。この裁判所における口頭弁論が対決あるいは問注と呼ばれた。また訴訟一般を指して問注ということもあった。御成敗式目には,問注の場で〈悪口〉を吐いた者は所領を没収されるという規定がある。当事者が問注の場に出頭しないこともしばしばあったが,裁判所は召喚状(これを召文(めしぶみ)という)の申達を3度まで繰り返すことになっていた。
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