国がある事業を行う際には,そのための契約を当該年度内に結ぶ必要があるが,実際の支出は翌年度以降でよい場合がある。このような場合も契約を結ぶには,その支出についてあらかじめ予算の一部として国会の議決を経ておく必要があるが,このようにして国が金銭給付を内容とする債務を負担する行為を国庫債務負担行為という(財政法15条)。憲法85条は〈国が債務を負担するには,国会の議決に基くことを必要とする〉と規定しており,国会の議決によらずに国が債務を負うような契約を結ぶことを禁じている。したがって,たとえば公共事業等の長期的なプロジェクトに関して契約を結ぶために,他に法律等の根拠が存在しない場合には,支出が数年後であっても,予算の形で国会の承認を得る必要が生じてくるわけである。
国庫債務負担行為は,その性格により2種に分類できる。一つは,特定の事項につき,その必要の理由,契約を行う年度,その限度額,支出を行う年限(原則として5年以内)等を明らかにして国会の議決を経るものである。もう一つは,災害復旧その他の緊急の必要があって,国が債務負担を行うような場合のために,あらかじめ限度額のみを定め,目的を特定せずに国会の議決を経るものである。いずれの場合も,これらに基づいて実際の支出を行う場合には,あらためて歳出予算として国会の議決を得なければならない。
→予算
執筆者:竹内 克伸
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国が金銭給付を内容とする債務を負担する行為をいう。憲法第85条は、「国が債務を負担するには、国会の議決に基くことを必要とする」と規定しており、これを受けて財政法第15条では、国が債務を負担することができる場合として、法律、歳出予算などに根拠のあるもののほか、次の二つの場合を認めている。これが国庫債務負担行為である。一つは、年度内に契約をしておく必要があるが実際の支出は翌年度以降でよいという場合などにとられるもので、事項ごとにその必要な理由、支出年度、年限、年割額を明らかにして、予算の一部である丁号予算として、国会の議決を得ることが必要である。いま一つは、災害復旧その他緊急の必要があって国が債務の負担をしなければならないという場合のためのもので、事項を特定しないで限度額のみを定めて国会の議決を経ておき、その金額の範囲内で行うものである。
国庫債務負担行為というのは、国会により債務負担権限そのものを認められるものであり、のちに改めて歳出予算が組まれなければ実際の支出を行うことはできない。財政の健全性の維持のため、この債務負担行為によって支出できる年限は5年以内に限られている。
[林 正寿]
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(新藤宗幸 千葉大学法経学部教授 / 2007年)
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…したがって,実際の歳入と歳入予算が異なったとしても,それは単に見積りが妥当であったかどうかの問題にすぎず,実際の歳入が予算を超過し,いわゆる自然増収となって歳計剰余金を形成することもありうるし,逆に不足し歳入欠陥となって決算調整資金の取崩しが必要となる場合もありうる。反面,歳出予算の場合には,歳出予算の金額を超過して支出を行うことはできず,また債務を負担する際にも,法律,継続費あるいは国庫債務負担行為に基づいて債務の負担を行うものを除いて,原則として必ず歳出予算の限度内で債務の負担をしなければならない。したがって歳入歳出予算は,歳出についてのみその拘束力が存在するということができる。…
※「国庫債務負担行為」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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