国籍条項(読み)こくせきじょうこう

百科事典マイペディア 「国籍条項」の意味・わかりやすい解説

国籍条項【こくせきじょうこう】

地方公務員一般職採用を日本人に限定する条項(教育職など特定職種については普通外国籍職員の任用が許されている)。地方公務員法などには外国人の採用を禁じた明文規定はないが,国は〈公の意思形成や公権力行使には日本国籍が必要なのは当然の法理であり,したがって将来幹部昇格の可能性のある一般行政職については外国籍職員の任用を認めない〉との見解を維持し,国籍条項の厳守を求める通知を地方自治体に出してきた。しかし都道府県や政令指定都市を除く市町村の約3割がすでに国籍条項を撤廃しており,さらに1996年政令指定都市としては初めて川崎市が原則撤廃(消防職を除く。また特定の業務への配属や課長職以上の昇任は制限)に踏み切った。ほかには,横浜市,大阪市,神戸市,神奈川県,高知県,大阪府などが,一定の制限のもとで,国籍条項を廃止している。→外国人参政権
→関連項目外国人国籍

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

知恵蔵 「国籍条項」の解説

国籍条項

地方自治体一般事務職員などの受験資格には「日本国民に限る」という「国籍条項」が置かれていたが、地方公務員法には明文の根拠はない。自治(現・総務)省は、1953年に内閣法制局が示した「外国人が公権力の行使、公の意思形成に参加できないことからくる当然の法理」であるとの見解にしたがって地方自治体を指導してきた。しかし近年、「国籍条項」を撤廃して、医療職、技術職を中心に外国人にも地方公務員への道を開く自治体が増えてきた。現在では、自治体のほとんどが外国人に採用の道を開き、自治省も96年11月「条件付き撤廃」を容認した。国籍条項によって管理職試験の受験を拒まれ、資格の確認を求めた在日韓国人2世の女性の訴訟では、東京地裁は96年5月16日の判決で、都の管理職受験拒否は違憲・違法ではないとし、東京高裁は97年11月26日の判決でこれを覆し、違憲・違法としていたが、最高裁は2005年1月26日の判決で再転、受験拒否は合法と判断した。

(宮崎繁樹 明治大学名誉教授 / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「国籍条項」の意味・わかりやすい解説

国籍条項[公務員]
こくせきじょうこう[こうむいん]

1953年の内閣法制局見解以来,公務員採用の際にとられてきた原則で,公務員の受験資格には日本国籍を有することが必要条件とされてきた。国家公務員の場合,依然として原則重視の立場が貫かれているが,92年の大阪市を皮切に地方公務員の採用については,国籍条項の廃止が徐々に広がってきている。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

プラチナキャリア

年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...

プラチナキャリアの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android