国造本紀(読み)こくぞうほんぎ

改訂新版 世界大百科事典 「国造本紀」の意味・わかりやすい解説

国造本紀 (こくぞうほんぎ)

日本古代史書。《先代旧事本紀(せんだいくじほんぎ)》の一部編。巻十に当たる。古訓では〈くにのみやつこのもとつふみ〉となるが,本書平安時代成立なので通常は音読畿内大倭から多褹(たね)までの大化前代の地方官豪族である国造(くにのみやつこ)名を掲げ,その系譜と任命設置時を示している。後世の国造である律令国造の名や国司名も混入しているが,他に例のないまとまった国造関係史料なので,独自の価値を持ち古代史研究の史料となっている。《国史大系》所収。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「国造本紀」の意味・わかりやすい解説

国造本紀
こくぞうほんぎ

『先代旧事本紀(せんだいくじほんぎ)』の巻第10にあたる一巻の書。『旧事本紀』は聖徳太子の撰(せん)という序文を有するが、平安初期につくられた偽書とされる。しかし、そのなかの巻第3「天神本紀」の一部、巻第5の「天孫本紀」、それにこの「国造本紀」は、他のいずれの文献にもみえない独自の所伝を載せていて注目される。「国造本紀」は、大倭国造(やまとくにのみやつこ)以下全国で130余りの国造を列挙し、それぞれに国造任命時代、初代国造名を簡単に記したものである。それらのなかには和泉(いずみ)、摂津丹後(たんご)、美作(みまさか)など後世の国司を記載したところもあり、また无邪志(むさし)と胸刺(むさし)、加我(かが)と加冝(かが)など紛らわしいものもあるが、概してかなり信用できる古伝によっていると思われ、古代史研究の貴重な史料となる。『新訂増補国史大系』所収。

[黛 弘道

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百科事典マイペディア 「国造本紀」の意味・わかりやすい解説

国造本紀【こくぞうほんぎ】

古代の史書。大化(たいか)改新以前の畿内の大倭(やまと)から南海の多【ね】(たね)まで全国各地の国造(くにのみやつこ)の名をあげ,その系譜と叙任を記している。後世の律令(りつりょう)時代の国造や国司(こくし)の名が混入しているが,古代史研究の史料として貴重。《先代旧事本紀(せんだいくじほんぎ)》の巻10に収められている。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「国造本紀」の解説

国造本紀
こくぞうほんぎ

全国135の国造(国司や重複を含む)について,それぞれの設置時期や被任命者を列記したもの。「先代旧事本紀(せんだいくじほんぎ)」巻10として残る。「古事記」「日本書紀」にみえる国造で掲載されていないものも2~3あるが,国造名を網羅したものとして貴重で,記紀など他書にみられない所伝もあり,国名表記に古い用字もある。823年(弘仁14)の加賀国分立を記し,最終的な成立は平安初期か。成立経緯は,「先代旧事本紀」編纂時に古文献を斟酌して作成したとする説,6世紀中葉~7世紀前半にその当時実在した国造を記録した原資料が存し,702年(大宝2)に作成された「国造記(こくぞうき)」をその公的記録とみなす説などがある。国造研究の重要な史料であるが,内容には十分な考証が必要となる。「国史大系」所収。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「国造本紀」の意味・わかりやすい解説

国造本紀
こくぞうほんぎ

大倭 (やまと) 国以下の国造の歴名,本系を記したもの。編者未詳。1巻。平安時代初期の成立。『旧事本紀』巻 10所収。神代本紀から帝皇本紀までの9巻が編年史であるのに対し,巻 10には別に序文があり,独立した一書の体裁をとっている。

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