デジタル大辞泉 「国際原子力事象評価尺度」の意味・読み・例文・類語
こくさい‐げんしりょくじしょうひょうかしゃくど〔‐ゲンシリヨクジシヤウヒヤウカシヤクド〕【国際原子力事象評価尺度】
[補説]チョルノービリ原発事故はレベル7、スリーマイル島原発事故はレベル5と評価された。平成23年(2011)3月11日に起きた東北地方太平洋沖地震に伴う福島第一原発事故は、発生当初、暫定的にレベル4と評価されたが、約1か月後にレベル7に引き上げられた。
原子力発電所や放射性同位元素を扱う施設で起きた事故などのトラブルの深刻度を示す国際指標。略称INES(イネス)。国際原子力機関(IAEA)と経済協力開発機構(OECD)の原子力機関(NEA)が共同で策定し、1992年から各国に採用するよう勧告している。日本は1992年(平成4)8月から採用・運用を始めた。レベル7からレベル0まで8段階あり、数字が大きくなるほど重大な事故であることを示す。放射性物質の外部放出、炉心損傷、施設内の汚染、防護施設の劣化状況などを基準に尺度を決めており、レベル7~4は「事故」(accident)、レベル3~1は「異常な事象」(incident)、レベル0は「尺度以下」(deviation)と規定されている。
国際原子力事象評価尺度の対象は、原発などの原子力関連施設や放射性同位元素の使用・保管施設のほか、原子力に関連した物質の運搬にかかわる事業も含まれる。トラブルが発生し、国際原子力事象評価尺度が暫定的にレベル2以上と評価された場合、各国政府は原則として24時間以内に国際原子力機関へ報告しなければならない。国際原子力機関は加盟各国に通知するとともに、トラブル現場へ調査団を派遣し、事故や施設破損状況、放出された放射線量などを測定して国際原子力事象評価尺度を決める。
1986年のチェルノブイリ原子力発電所事故は放射性物質が大量に外部放出したため、最悪のレベル7(深刻な事故)と評価されている。1979年のアメリカのスリー・マイル島原発事故はレベル5(広範囲な影響を伴う事故)、1999年(平成11)の東海村臨界事故はレベル4(局所的な影響を伴う事故)、1995年のもんじゅナトリウム漏洩(ろうえい)事故はレベル1(逸脱)と評価されている。2011年(平成23)の福島第一原子力発電所事故は当初レベル4という見方があったが、大量の放射性物質が外部放出しており、チェルノブイリ原発事故と同じレベル7に引き上げられた。また、2013年夏に発覚した福島第一原発における高濃度放射能汚染水が貯水タンクから漏れた事故について、日本の原子力規制委員会は、当初レベル1としていた暫定評価をレベル3(重大な異常事象)に修正した。
[編集部]
(大迫秀樹 フリー編集者 / 2011年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
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