第2次世界大戦末期の1944年,連合国,中立国52ヵ国の参加を得て,シカゴで開催された国際会議で採択された戦後の民間航空運営のための基本条約。シカゴ条約ともいう。前文,本文,末文からなる。本文は,第1部〈航空〉で締約国の領域上の空間での主権を確認し,同条約の民間航空機のみへの適用を定め,また出入国規制,航空機の登録,税関出入国手続,事故調査等を規定している。第2部ではICAO(イカオ)の組織と任務を規定し,第3部では国際航空運送を円滑にする措置につき定め,第4部の最終規定で,同条約が1919年のパリ条約,28年のハバナ条約に代わるものとしている。シカゴ条約加盟国は189ヵ国(2004年末現在)。日本は53年に61番目の加盟国となり,56年理事国に選出された。
公法面での基本条約であるシカゴ条約に対比されるものに,運送人の権利義務等の私法関係を規定した国際法として,〈ワルソー条約〉がある。1929年10月,ポーランド政府がワルシャワ(ワルソー)に招集した第20回の国際私法会議で署名調印されたものである。正式には〈国際航空運送についてのある規則の統一に関する条約The Convention for the Unification of Certain Rules Relating to International Carriage by Air〉という。同条約は国際運送での運送契約,運送人の責任等の規定を通じ,航空機の発達に伴う国際航空運送の変貌に対処するための規定を行っている。
執筆者:津崎 武司
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1944年11月、連合国と中立国52か国がアメリカのシカゴで締結した第二次世界大戦後の国際民間航空に関する根本原則の確立かつ国際民間航空機関(ICAO(イカオ))の設立を目的とした多国間条約。シカゴ条約ともよばれる。条約は4部22章96条からなる。条約の目的として、前文において「国際民間航空が安全かつ整然と発達するよう、国際民間航空運送業務が、機会均等主義に基づいて確立され、健全かつ経済的に運営されるように締結する」としている。日本は1953年(昭和28)10月に加盟した。
しかし、本条約においては、国際航空に関する根本原則を定めることはできたものの、主催国アメリカの意図した幅広い自由な国際民間航空の活動を満たすものではなく、領空通過および運輸目的以外で着陸する特権については国際航空業務通過協定によって、そのほかの運輸権については当事国間の二国間航空協定によることとなった。本条約によりICAOの設置および運営の規定がなされているが、ICAOへの加盟は本条約の加盟によってなされる。
[秋葉 明]
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…航空【東 昭】
[国際法]
航空機は,国際慣習法上,国家または私人の管理に属することにより,公または私の航空機に分類される。1944年の国際民間航空条約(シカゴ条約)では,用途を基準として,軍・税関・警察業務に用いるものを国の航空機といい,他の航空機を民間航空機とする。航空機は,公海・無主地上の飛行の自由を有し,登録国の支配に服する。…
…航空機の事故は空港内およびその周辺で発生することが多いが,山岳,森林,洋上などでの遭難もまれではないため,おもな国々では常時,捜索・救難態勢を整えている。国内での捜索・救難活動がそれぞれの軍,警察,沿岸警備機関,民間の企業・団体の協力により,航空機,船艇,車両などあらゆる装備を駆使して行われることはもちろんであるが,国際的にも国際民間航空条約に相互援助の規定があって,加盟国は必要な場合には遭難機の国籍いかんにかかわらず捜索,救難に協力することが義務づけられており,その場合の組織,行動基準,通信・信号方法などが詳細に決められている。これには軍や政府機関も随時参加する。…
※「国際民間航空条約」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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