狭義には,一国の個別商品が国内あるいは海外市場で与えられた為替相場のもとで,市場におけるシェアを拡大できるかどうかをさす。より広義には,商品グループ,産業あるいは全輸出品についても使われる。国際競争力は,当該商品の価格が相対的に安価であるためにシェアを拡大する場合の価格競争力と,商品の質的な優秀さ,納期の短さ,デザイン・ブランドの信用度といった非価格要因による非価格競争力とがある。各国の国際競争力を基本的に規定するのは,その商品をいかに安価に生産するかという生産コスト要因であり,たとえば生産に携わる労働者の熟練度,資本設備の豊富さや技術条件等が重要である。さらに自動車や工作機械等では,注文や修理にいかに迅速に応じうるかの非価格競争力の優劣もたいせつである。
日本は1960年代を通じ,工業製品について高い輸出増加率を実現し,世界市場でのシェアを大幅に拡大した。このようなシェアの拡大を可能にしたのは,高度成長下で各産業,ことに鉄鋼や化学といった部門での生産性上昇がいちじるしく,国際競争力が強化されたためである。70年代に入ると,基礎的な関連部門の拡充を基盤に,熟練度の高い労働者が均質性の高い家電製品,自動車や機械を製造し,他の先進諸国よりも高い輸出伸長を続けた。その際,海外市場での販売網の整備や市場調査による消費者ニーズへの対応といった非価格競争力増強への努力がなされたことはもちろんである。
執筆者:佐々波 楊子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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