翻訳|pressure
二つの物体が接触して押し合っているときに,その接触面で両物体が及ぼし合っている力。一つの物体内でもその内部の各部分が互いに押し合っているときにはこれを圧力という。後者の場合には,物体内に面を考えてその両側の部分がこの面のところで互いに及ぼし合う力(応力という)として考える。これらの力が面に垂直でないときには,それを面に垂直な成分と平行な成分とに分け,垂直成分が押し合う力になっているときにこれを圧力という(引き合うときは張力)。
圧力は広がりをもった面にわたって働くものであるから,全体の力の大きさ(全圧力という)が同じでも,それを受ける面積の大小によって面上の各点が感ずる圧力の強さは異なる。そこで,大きさPの力が面積Sのところに一様にかかっている場合に,その圧力の強さはp=P/Sであると定義する。物を机の上にのせたときなどには,一般には圧力の強さは位置によって異なるから,各点ごとにその点を含む微小面積dSを考え,そこに働く力の大きさをdPとして,p=dP/dSによってその点の圧力の強さを定める。圧力の強さのことを単に圧力ということも多い。
上の定義から明らかなように,圧力の強さは(力)÷(面積)の単位で表される。国際単位系では1m2に1Nの力が一様にかかっているときの圧力の強さが単位になる。これをパスカルと呼びPaで表す。圧力の単位としてはこのほか,バール(bar。1bar=105Pa),ミリバール(mb。1mb=102Pa),気圧(atm。1atm=101325Pa)などがある。真空を扱う分野などでは,真空の発見者トリチェリにちなんだトル(torr。1torr=133.3Pa)という単位もまだ用いられている。なお,圧力(の強さ)を測定する場合,真空を基準にして表した圧力を絶対圧(力),また絶対圧と大気圧との差をゲージ圧(力)と呼ぶことがある。
物体内の1点における圧力の強さは,考える面の方向によって一般には違ってくるが,流体では方向によらず流体内の位置だけで決まる。これは,上下から押されれば左右へ広がろうとして左右とも押し合うことになる流体の性質による。このことからわかるように,重力の作用下に置かれた流体内の圧力は,上からの重みが加わるために,鉛直下方にいくほど大きくなり,密度ρが一定とみなせる範囲内なら,高さの差hによる圧力差は,gを重力加速度としてρghに等しい。水中の物体が周囲の水から受ける圧力の強さには深さによるこの差があるため,その合力が浮力として感じられる。
静止した一様な物体の熱的性質を考える熱力学では,圧力は物体の状態を指定する状態量の一つとして温度や体積とともに重要な物理量である。なお,高圧下の物性を研究するため10~1000kbarといった超高圧を得る方法もいろいろ考案されている。
執筆者:小出 昭一郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
物体の表面、あるいは物体内部に考えた任意の面に垂直に加わる力(応力)を圧力という。圧力は単位面積当りの力で表す。静止している流体(液体や気体)の内部に任意の面を考えると、これにずり応力は働かず、圧力のみが働く。また、その大きさは面の向きによらず等しい。これを静水圧という。
圧力の単位としては平方メートル当りニュートン(N/m2)を用いる。また、パスカル(Pa)という単位を使うこともある。
1Pa=1N/m2
である。地球表面上の大気の圧力(大気圧)は場所、時間によって変わるが、その標準の値として1気圧を定め、1atmと表す。
1atm=101325Pa
である。1気圧は高さ760ミリメートルの水銀柱による圧力に等しいので1気圧の760分の1を1mmHgと書き、あるいは1トルtorrとよんでいる。また105Paを1バールbarという。10-3バールは1ミリバール(1ヘクトパスカル)であるから、1気圧は1013.25ミリバール(ヘクトパスカル)である。
大気の圧力は地上の高さが増すとともに低くなる。また海洋中では水の重さのために、深くなるほど圧力は増す。深さ10メートル当りほぼ1気圧ずつ増加する。地球内部の圧力は非常に高い。地球上でも低圧、高圧をつくりだすことができる。容器の内部の圧力を周りより低くした状態を真空という。真空といっても、圧力がゼロになるのではない。いろいろなガスボンベの中は高圧になっている。気体による高圧のほか、液体や固体を圧縮することでも高圧をつくることができる。高圧、真空はいろいろな工業に広く利用されている。
[和田八三久・西 敏夫]
『計量管理協会編『計測技術シリーズ3 圧力の計測』(1987・コロナ社)』▽『日本化学会編『実験化学講座4 熱・圧力』第4版(1992・丸善)』
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…19世紀に触,温,冷,痛覚に対応する感覚点sense spotが発見され,以来触覚が温,冷,痛の諸感覚からより明確に分離されるようになった。
[触覚と刺激]
変形が1回かぎりであればそれは軽い一過性の接触の感じをおこすが,これがある頻度(10回/秒以上)で繰り返されると振動感覚vibrationを生じ,変形が一定時間以上持続するときには圧覚pressureを生じる。接触の感じは,局所的な圧迫によって皮膚がへこんだときおこるほか,たとえば皮膚に接着した物体を介して皮膚が軽くひっぱり上げられても生じる。…
…水や空気で代表される液体や気体は固体と異なり,一定の形をもたない。そしてわずかな圧力で容易に変形し,その運動を続ける。このため,液体と気体を総称して流体と呼び,その運動を流れという。…
※「圧力」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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