地域(読み)チイキ(英語表記)region

翻訳|region

デジタル大辞泉 「地域」の意味・読み・例文・類語

ち‐いき〔‐ヰキ〕【地域】

区画された土地の区域。一定の範囲の土地。「地域の代表」「防火地域
(日本、または国際社会が)独立国として承認していない領域。また、ある国の領土の一部であるが、本国とは別の体制を認められている区域、自治領植民地などをいう。台湾パレスチナプエルトリコなど。
[類語]区域地区地方方面一円一帯地帯界隈かいわい土地境域さかい領域エリアゾーン区画

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精選版 日本国語大辞典 「地域」の意味・読み・例文・類語

ち‐いき‥ヰキ【地域】

  1. 〘 名詞 〙 土地の区域。区画された、ある範囲の土地。
    1. [初出の実例]「此執政は、其地域の諸方を、甚だ詳密に知れり」(出典:玉石志林(1861‐64)三)
    2. [その他の文献]〔周礼‐地官・大司徒〕

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改訂新版 世界大百科事典 「地域」の意味・わかりやすい解説

地域 (ちいき)
region

一定の意味を有する空間的まとまりとして区画された地球表面の一部であって,その周辺の土地空間とは異なる特徴,すなわち一定の指標に則して全体として等質性(均等性)あるいは統一性といった特性が識別される範囲。ただし,個々の建物と敷地,公園,運動場,道路,1区画の農地や林地などは,それ自体地域とは見なされず,地域を構成する土地空間単位である。等質性,統一性などが識別される地域のほかに,政治・行政上その他の実用上指定された区域も地域と呼ばれることが多く,前者を実質地域または地理学的地域,後者を形式地域として区別することもある。地域の代替語あるいは類語には,地区,区域,領域,圏域,地帯,地方などがあるが,相互の使い分けは一定していない。また地域の複合語としては,地域住民,地域社会,地域主義,地域計画,地域指定,地域性,地域区分など多数のものがあり,法律用語においても地域概念の重要性が高まり,〈地域〉は現代社会に関するキーワードの一つとなっている。

実質地域を画定する観点は,均等性と統一性との二つに大きく分けられる。前者は,指標に関して地域内部の部分的差異がなるべく小さくなるように,すなわち全体的に均等性(一様性,等質性)が認められるように画定するものである。たとえば,気温と降水量を組み合わせた気候類型による気候区,成因や構成物質,起伏量の差異により分類された地形区などの各種の自然地域や,同一作物あるいは数種の作物の組合せが展開している範囲,住宅地区,工業地帯などが,均等地域(等質地域)のもとになる。

 実質地域を設定するためのもう一つの観点は,機能的に関連し合っている部分空間が,全体としての組織や一体性をもつ点におかれる。これによって把握される地域は統一地域とか機能地域とか呼ばれる。さらに統一地域は,部分空間の統一の仕方によって中心地圏あるいは結節地域nodal region,機能分化地域,統合地域,連合地域などに区別される。中心地圏あるいは結節地域は,中心地central place機能をもつ結節点とその周辺との間に人,財,サービス,貨幣,情報などが交流する圏域であり,中心地の機能がゆきわたる供給圏と,逆に中心地へ周辺から流入する需要圏(流入圏,吸引圏)からなる。具体的には,商圏,通勤・通学圏,サービス圏,病院などを中心にした医療圏などで,都市圏はそれらを総合したものである。中央の政治・行政力によって統合された国家領域も中心地圏とみなすこともできるが,多くの都市圏や各種の均等地域群を統括しているので,統合地域と考えるべきであろう。

 機能分化地域としては,大都市内域において官庁街,中央業務街,商業区・金融街,歓楽街,住宅街,工場地区,緑地などのように,各都市機能が都市の発達に伴い地域的に分化しており,しかも全体が組織された地域として機能している場合が例としてあげられる。

 連合地域の好例は,スイス連邦のように,コミューンの自発的な同盟によって結成された国家領域である。

複雑な地球表面を一定の目的と指標事象の分類体系に従って一連の地域群に分けるか,単位的な小地域群を共通する属性によって大きな地域へ段階的にまとめていき,地域システムないし地域(群)系を作る営為はリージョナリゼーション(地域編成,地域区分)と呼ばれる。逆にいえば,地域編成は対象地域の場所的差異,地域内の配列構造と関連性,事象の空間的変動傾向を把握しやすくし,さらに応用面としては,地域計画,地域管理,空間行動制御などを行いやすくする手段である。

 地域現象の空間的推移,地帯的配列,たとえば海岸から山地という地形系列,赤道から極地へかけての気候帯の配列についての関心は,すでにギリシア・ローマ時代に現れたが,科学的規準による地帯構造の認識は19世紀以降になる。気候帯の境界線には従来両回帰線のような緯線が採用されていたが,1817年にA.フォンフンボルトが初めて等温線図を作り,79年にはズーパンA.Supanによって等温線による新しい気候帯の区分が提唱された。その後W.ケッペンは,この方式に改良を加え,植生図との対応関係を重視して,利用価値の広い世界の気候区分を達成したのである。このほか,20世紀に入ると,ハーバートソンA.J.Herbertsonによる世界の自然的地域区分図(1905)をはじめとして,アンステッドJ.F.Unsteadの地理学的地域区分の提唱(1916),30年代にはD.S.ホイットルセーによる世界の農業区分図(1936),イェーガーF.Jaegerによる世界の人文地理学的区分図(1934)などが相前後して提示された。これらはいずれも同質的見方による地域システムであった。

これらに対して,農村とその中心をなす都市との機能関係に視点をおいて,同心円的圏域構造の形成理由を初めて論証したのは,J.H.vonチューネンである。その古典的名著《孤立国》(1826)には,著者自身の農場経営における収支計算に基づき,それに演繹的推敲を加えて導き出された法則,すなわち,中心の唯一市場たる都市からの距離に応じて,農業経営形態と輪作方式が輸送費の関係で同心環的に変わる理由が証明されている。この理論は,収穫漸減の法則や差額地代の理論によって裏付けられることは明らかである。

 ふしぎなことに,この画期的なチューネンの法則が,正当に評価されるまでには100年近い年月を必要とした。ともあれ,地理学界においては,1930年代にまず農業地域区分の重要原理として確認され,さらにW.クリスタラー中心地理論(1933)にも,少なからず影響を与えた。その中心地理論は,〈チューネンの孤立国〉の境壁を撤去して現実社会に適用しうる次元にまで高められており,さらにA.レッシュの経済立地論(1940)によって補強されて,第2次大戦後における都市システム,地域システム研究のパラダイムとなった。また地域計画,産業立地,行政区域の統合などに応用される基本的な地域モデルとしても重視されている。

 その理由は,クリスタラー・モデルが,現代社会における大小の都市(中心地)の階層化が生じる理由,各階層の中心地の機能あるいはサービスの種類と数,それぞれの圏域の面積,各中心地間の距離との間に幾何学的な法則性があることを明快に説明できるからである。このモデルの優れた点は,一様な性質の平野に同質的等規模の基礎集落が等間隔(正三角の配置)に分布する抽象的空間を仮定すると,次の三つの原理,すなわち,商業中心地の発達を第一義とする市場原理,最も合理的な交通路線網を求める交通原理,最も合理的な行政区域を編成するための行政原理にそれぞれ規定される中心地網システムが成立することを明快に幾何学的図式として提示していることである。

 この中心地モデルを共通の基準にして,各国各地方の都市システムの比較研究が盛んに行われ,自然地理的条件,社会経済の発展段階,工業化,大都市化等の差異による現実の都市システムが理解しやすくなったのである。しかも最近におけるコンピューターの驚異的な発達は多変量解析を容易にし,地域区分の面では,主成分分析やクラスター分析等の応用によって,より客観的な方法が開発され,リージョナリゼーションの研究は質量ともに飛躍的な進歩を示している。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「地域」の意味・わかりやすい解説

地域
ちいき

一般には地表上の広狭の広がりをもつ特定の部分をさすことばであり、地方あるいは地区などと同義に用いられる。しかし世界の地表上には、実にさまざまな自然的あるいは人文的事象が複雑に分布している。これらの諸事象のうち、独自性を備え、地域の構成要素としてなんらかの意味で等質的性格を有し、周辺の外部の地域とは異質的であるとき、それを基準にして、他地域との間に境界を定めることができる。このようにして設定された地域を、地理学では等質地域あるいは均質地域と称している。たとえば三角州、黒土地帯、熱帯雨林地域など、地形、地質、気候、植生などの自然的事象が複合し、相互に作用して等質性が形成された地域である。また人文現象の場合でも、たとえば東南アジアのモンスーン地帯にみられるように、季節風に代表されるこの地域の自然的事象の等質性に対応して、米作を主とする農業をはじめ、その他の産業や集落、人口分布、住民の生活様式などにも等質性が現れ、この地域の地域性が構成される。

 しかし一方では、このような等質地域に対して、互いに隣接するが相異なるいくつかの等質地域を機能的に統合した統一地域も形成される。統一地域は諸機能が集中する中心によって結節・統合されるために結節地域ともよばれる。これを大都市圏をもって一例とすれば、商業地域、工業地域、市街地域、近郊地域など、それぞれ異質の多くの等質地域が、いずれも大都市を中心にして機能的に結合しているので、この大都市圏を地理学では統一地域または結節地域と称するのである。しかし都市に大小があるように、結節地域も機能的中心の大小によって階層的差異が生じ、大きな結節地域のなかに、いくつかの小さな結節地域が含まれる階層的構成が形成される。この結節地域の階層的地域構造を最初に明確に打ち出したのが、1933年のドイツのクリスターラの中心地理論である。

[織田武雄]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「地域」の意味・わかりやすい解説

地域
ちいき
region; area

他から区別される特性をもった地表の部分。共通の一体性をもつ場合を等質地域,中心で相互に結びついて一体性をもつ場合を機能地域,または統一 (結節) 地域という。それらの特性の究明が,地理学,特に地誌の基本的な研究対象をなしている。地域の追求には地域区分が重要な過程であり,その手段として地図,分布図の作成や読図,さらに野外調査がある。等質地域は,地域を構成する自然,人文諸要素のうち,なにか1つを取出し,それを規準として地表を区分したもので,それには自然諸地域と人文諸地域とがある。これに対し,統一地域では,いろいろな要素の複合,地域の階層秩序などが問題とされる。人間が地域的に集団をなしている以上,その社会・経済生活の発展は地域のいかんによって異なる。したがって地域的特性を科学的に究明することが,地理学研究の大きな課題である。

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普及版 字通 「地域」の読み・字形・画数・意味

【地域】ちいき

境域。

字通「地」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の地域の言及

【カウンティ】より

…イングランドとウェールズは地理上のカウンティとしては52に区分され,行政上の単位としては〈行政上のカウンティadministrative county〉が58,それと同格の〈カウンティ都市county borough〉が83あった。しかし1973‐75年以来,イギリス全体でこのカウンティ制にかなり大幅の改革が行われ,従来のカウンティ,カウンティ都市が統廃合され,新たにイングランドとウェールズでは,大ロンドンGreater London,6大都市圏カウンティmetropolitan county,47非大都市圏カウンティnon‐metropolitan countyが生まれ,スコットランドは9地方regionと3島区island areaに,北アイルランドは26地区districtに区分された。ただしイングランドについて言えば,一般的には地理上のカウンティがその基礎に置かれており,したがって旧来のカウンティは事実上生き続けていると言えよう。…

【植物区系】より

…ある地域に生えている植物の種の全体を植物相(フロラ)floraというが,植物相を構成する種は地域によって異なっている。隣接する地域ごとに植物相を比較してみると,構成種の違いがとくに目立つ場合がある。このように,隣接する地域で植物相の構成要素が大きく異なっている場合,そこにフロラの滝が存在するという表現をすることがある。地域による植物相の類似の程度によってまとめていくと,フロラの滝の顕著なところを境界にして,植物の分布の様子を地域ごとに区分することができる。…

※「地域」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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