坂本(滋賀県)(読み)さかもと

日本大百科全書(ニッポニカ) 「坂本(滋賀県)」の意味・わかりやすい解説

坂本(滋賀県)
さかもと

滋賀県南部、大津市中北郊の一地区。旧滋賀郡坂本村。古くから西近江(おうみ)路の要地として重要視され、南部の穴太(あのう)は『延喜式(えんぎしき)』の駅家(うまや)でもあった。坂本村はまた、世界遺産(文化遺産)にも登録されている比叡山(ひえいざん)延暦寺(えんりゃくじ)と日吉大社(ひよしたいしゃ)の門前町としても栄えたが、還暦を過ぎた僧侶(そうりょ)が延暦寺から下山して生活した寺坊である里坊(さとぼう)が建ち並んで独特の集落景観を残している。里坊の大部分は、奥行の深い石垣の積み方で知られる穴太衆積みの石垣で囲まれ、天台真盛(しんせい)宗盛安寺の石垣は、その代表的なものの一つである。天台真盛宗総本山の西教寺(さいきょうじ)、最澄(さいちょう)の生誕地といわれる生源寺(しょうげんじ)、江戸時代まで天台座主(ざす)が居所とした滋賀院などのほか、延暦寺にかかわる古文書などを収蔵する叡山文庫などがある。坂本地区の里坊群と門前町の町並みは、1997年(平成9)国の重要伝統的建造物群保存地区に選定された。1927年(昭和2)坂本から比叡山(848メートル)へケーブルカー開通、1958年(昭和33)に比叡山ドライブウェイ、1966年には奥比叡ドライブウェイが通じ、観光基地として繁栄している。1986年には湖西(こせい)道路も開通した。山麓(さんろく)部の宅地開発で京阪電気鉄道石山坂本線坂本駅、JR湖西線比叡山坂本駅を核にした景観の変容が大きく、旧集落と対照をなしている。

高橋誠一

『川崎透編『比叡山門前町坂本』(1980・近江文化社)』


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