堅い(読み)カタイ

デジタル大辞泉 「堅い」の意味・読み・例文・類語

かた・い【堅い/硬い/固い】

[形][文]かた・し[ク]
外力に対する抵抗力が大きく、容易に形を崩さない。「―・い殻を割る」「―・くてかめない肉」⇔やわらかい

㋐物が強い力でぴったりとすきまなく合わさっている。「―・く扉を閉ざす」「帯を―・く結ぶ」「―・い握手を交わす」
㋑力を加えても、抵抗があって、滑らかに動かない。「栓が―・い」
(内にあるものが)強くて、外からの力に負けない。しっかりしていて、揺るがない。「―・い信念」「―・い約束」「守りが―・い」「口が―・い」
厳格である。きびしい。「―・く禁ずる」「身持ちが―・い」

㋐確かで、あぶなげがない。信用がおける。手堅い。堅実だ。「―・い商売」「当選は―・い」「予算を―・く見積もる」
㋑取引で、相場が一向に下がるようすがない。
㋒何事もいいかげんにせず、きちんと扱うさま。まじめである。「―・くて信用のおける人」「―・い本」「そう―・いことを言うな」
自由な感じや、やわらかな感じに欠けたようすをいう。
㋐自在な動きができない。融通がきかない。「からだが―・い」「頭が―・い」⇔やわらかい
㋑(表現などが)いかめしかったり、こわばったりしていて、すなおに人の気持ちに入ってこない。「文章がまだ―・い」「デッサンの線が―・い」
㋒鋭くて、張りつめた感じを与える。「―・く乾いた音」「表情を―・くして事態の推移を見守る」
㋓緊張から、気持ちにゆとりがなくなる。言動がぎくしゃくする。
[補説]漢字の使い分けは「固い」が広く用いられ、「硬い」は物の性質、「堅い」は状態・ようすに用いられることが多い。
[派生]かたげ[形動]かたさ[名]
[類語](1こわ硬質堅硬生硬硬直硬化硬度剛性ごつい厳ついかちかちがちがちかちんかちんこちこちハード/(2きついがちっと堅固頑丈堅牢頑強強固牢固連用修飾語として)ぎゅっときゅっとがっちりかっちりしかひしとがっしりしっかり/(3揺るぎない強固堅固けんご牢固ろうこ磐石ばんじゃく金城鉄壁きんじょうてっぺき

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「堅い」の意味・読み・例文・類語

かた・い【堅・硬・固】

  1. 〘 形容詞口語形活用 〙
    [ 文語形 ]かた・し 〘 形容詞ク活用 〙 外的な力によって、壊したり、破いたり、変形させたり、動かしたりすることの困難なさまである。物質の性質・状態、人間の性状・性格・心理的状態、物・事柄の様態・様子などに対して使われる。⇔やわらかい
  2. ものの形状や状態がしっかりしていて、それを変化させることが難しいさまである。
    1. (イ) 物質の形状・状態が、こわしたり、変形させたりしにくいさまである。
      1. [初出の実例]「かたきいはほもあわ雪になし給ふつべき御けしきなれば」(出典:源氏物語(1001‐14頃)行幸)
      2. 「垣堵(ついかき)壊れたりと雖も、基趾尚し固(カタシ)」(出典:大唐西域記長寛元年点(1163)四)
    2. (ロ) 状態が強くしっかりしている。堅固である。
      1. [初出の実例]「秀罇(ほだり)取り 加多久(カタク)取らせ 下賀多久(ガタク) 彌賀多久(ガタク)取らせ」(出典:古事記(712)下・歌謡)
      2. 「遠き所より思ふ人の文を得て、かたく封じたる続飯(そくひ)などあくるほど、いと心もとなし」(出典:枕草子(10C終)一六〇)
    3. (ハ) 丈夫で長もちのするさまである。健康である。
      1. [初出の実例]「取り結(ゆ)へる 縄葛は 此の家の長の 御寿(いのち)の堅(カタキ)なり」(出典:日本書紀(720)顕宗即位前・歌謡(図書寮本訓))
    4. (ニ) 固定していて動かしにくいさまである。
      1. [初出の実例]「中隔(なかへだて)障子を明け給ふに、かたければ『これ明けよ』との給ふに」(出典:落窪物語(10C後)一)
  3. 心が確定していて、動揺したりしにくく、安心できるさまである。
    1. (イ) 信義に厚く、心変わりがしない。信用のおけるさまである。心に思い抱くことの強いさまである。
      1. [初出の実例]「大君に 柯(カタク) 仕へ奉(まつ)らむと」(出典:日本書紀(720)雄略一二年一〇月・歌謡)
      2. 「容貌清らに、らうらうしく、年若きを見給て、かたかるべき契をしてへ給しほどに」(出典:宇津保物語(970‐999頃)忠こそ)
    2. (ロ) 態度が強くしっかりしている。きびしい。
      1. [初出の実例]「然れども大后を始めて、諸の卿等、堅(かた)く奏(まを)すに因りて」(出典:古事記(712)下)
      2. 「后、かたく諫め給ふに」(出典:源氏物語(1001‐14頃)明石)
    3. (ハ) かたくなである。ゆうずうがきかない。
      1. [初出の実例]「さても人の心かたくぐちなる物かな、もくぜんの事ばかりをしあんして、みらいの事をば心にかけぬなり」(出典:こんてむつすむん地(1610)一)
      2. 「『是で好(い)いんです。御嫁に行くと却って不可(いけ)ません』『困ったな、何時の間に、さう硬(カタ)くなったんだらう』」(出典:虞美人草(1907)〈夏目漱石〉一六)
    4. (ニ) きまじめである。堅実である。
      1. [初出の実例]「寺にての料理、汁をもる最中、ずんどかたい旦那参詣にて、長老迷惑なていを見て」(出典:咄本・軽口御前男(1703)二)
    5. (ホ) けちで、ちゃっかりしているさまである。〔日葡辞書(1603‐04)〕
  4. 人の様子、表情、感じ、筆跡などについて、角ばっていて、柔軟性に欠けるさまである。かたくるしい。
    1. [初出の実例]「おほむ手は、昔だにありしを、いと、わりなうしじかみ、ゑり深う、強う、固う、書き給へり」(出典:源氏物語(1001‐14頃)行幸)
    2. 「其様に堅う坐って居(ゐら)れては堪らぬ、此方(こちら)へ此方へ」(出典:いさなとり(1891)〈幸田露伴〉二九)
  5. ( 固定している、しっかりしているという意から派生して ) 態度・状態が強くしっかりしていて、くずれることがないさまである。
    1. (イ) ( 「目がかたい」という形で ) 眠けが来ないさまである。
      1. [初出の実例]「おとなし様にお目がかたい。少お休あそばせ」(出典:浄瑠璃・栬狩剣本地(1714)三)
    2. (ロ) ( 「口がかたい」の形で ) べらべらしゃべらない。
      1. [初出の実例]「(人さしゆびにて口をたたき)ここのかたいのはじまんじゃアないが」(出典:安愚楽鍋(1871‐72)〈仮名垣魯文〉三)
  6. 失敗する心配が少ない。確実である。実現することが確かだ。
    1. [初出の実例]「それぢゃというて、死なぬと堅(カタ)い事も言はれぬぢゃないか」(出典:歌舞伎勧善懲悪覗機関村井長庵)(1862)四幕)
    2. 「自分では他の堅(カタ)い商売よりは幾らか自信もあるらしいのだが」(出典:暗夜行路(1921‐37)〈志賀直哉〉三)

堅いの派生語

かた‐さ
  1. 〘 名詞 〙

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

今日のキーワード

プラチナキャリア

年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...

プラチナキャリアの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android