家庭医学館 の解説
へんけいせいようついしょうようぶへんけいせいせきついしょう【変形性腰椎症(腰部変形性脊椎症) Lumbar Spondylosis】
背骨(せぼね)(脊椎(せきつい))の椎体(ついたい)(背骨の一個一個)と椎体との間にはさまっていて、クッションの役目をしている椎間板(ついかんばん)が薄くなったり、椎体の端がささくれてきたりする変化を、変形性脊椎症(へんけいせいせきついしょう)といいます。
骨と椎間板の老化によっておこるもので、変形性関節症(「変形性関節症とは」)と同類の病気です。脊椎のうち、腰の部分におきた変形性脊椎症を、腰部変形性脊椎症または変形性腰椎症といい、変形性脊椎症の多くは、ここにおこります。
ついで頻度の高いのは、首の脊椎におこる頸部変形性脊椎症(けいぶへんけいせいせきついしょう)(変形性頸椎症(へんけいせいけいついしょう)(「変形性頸椎症(頸部変形性脊椎症)」))で、これ以外の部分におこる変形性脊椎症は、まれです。
[症状]
だるい、重い、鈍く痛むなどの腰の症状が中心ですが、下肢(かし)(脚(あし))にしびれや冷感をおぼえることもあります。
痛みは、腰から臀部(でんぶ)(おしり)にかけての広い範囲に感じ、手のひらをあてて痛む範囲を示せても、指で示すことはできないのが特徴です。
この病気が進んで、腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)(「腰部脊柱管狭窄症」)がおこると、休み休みでなければ歩けなくなります。
腰部変形性脊椎症がおこっても、まったく症状がなく、なにかの機会に腰のX線写真をとって、偶然見つかることも、かなりあります。
[治療]
症状がなければ、治療の必要はなく、これまでどおりの生活を送ってかまいません。
症状があっても、できるだけからだを動かし、ふつうに生活することがたいせつです。安静にしすぎると、筋肉が衰えて、かえって症状がでやすくなります。お年寄りでは、寝たままでいたりすると、立つことも歩くこともできなくなる危険があります。
腰が冷えると症状を強く感じがちです。冷やさないようにしましょう。
●温熱療法
腰を温めると症状がやわらぎます。家庭でおふろに入るのも、立派な温熱療法です。ぬるめのお湯にゆっくり入るようにしましょう。
おふろあがりなどに、腰痛体操(ようつうたいそう)(図「腰痛体操(1)」、図「腰痛体操(2)」、図「腰痛体操(3)」、図「腰痛体操(4)」)を行ない、腰の周囲の筋肉をきたえると、さらに効果的です。
ホットパックや超短波を用いて、腰を温める療法もあります。
●薬物療法
炎症と痛みをやわらげる消炎鎮痛薬、筋肉のこわばりをとる筋弛緩薬(きんしかんやく)、血液の流れをよくする末梢循環改善薬(まっしょうじゅんかんかいぜんやく)、神経のはたらきを改善する向神経(こうしんけい)ビタミン剤(ビタミンB12など)が用いられることもあります。
しかし、薬だけにたよって症状を抑えようとするのは禁物です。薬を飲み続けると副作用がおこりやすくなり、薬をやめると症状がぶりかえすといったことになりがちです。
●コルセット
痛みが強いときには、コルセットの使用を勧められることがあります。コルセットをつけると、痛みがやわらぎ楽になりますが、つけっぱなしにしていると、筋肉が弱ってしまいます。痛みが強いときにだけ使うようにしましょう。