大町釈迦堂口遺跡(読み)おおまちしゃかどうぐちいせき

国指定史跡ガイド 「大町釈迦堂口遺跡」の解説

おおまちしゃかどうぐちいせき【大町釈迦堂口遺跡】


神奈川県鎌倉市大町にある遺跡。釈迦堂切通しの東側、衣張(きぬばり)山を望む名越ヶ谷(なごえがやつ)と呼ばれる大きな谷戸(やと)の、南へ開く支谷の最奥に位置する。名越ヶ谷は逆川によって開かれた開析谷(かいせきだに)で、その支谷には山王谷(さんのうがやつ)など寺院伝承の残る支谷がある一方、この遺跡が存在する支谷のように谷戸の名称も伝わっていないものがある。名越は谷戸の開口部を逗子(ずし)に抜ける古東海道が東西に走り、のちに名越切通しが整備され、鎌倉七口の一つに数えられる交通の要衝である。遺跡の北には、釈迦堂谷(しゃかどうがやつ)や犬懸谷(いぬかけがやつ)などの谷戸があり、現在の釈迦堂切通しが開かれた時期は不明であるが、古くから南北方向の道もあったようである。長い間、初代執権北条時政の邸宅跡と伝えられてきた遺跡で、源頼朝の暗殺を企てた唐糸という女性が幽閉されたという唐糸やぐらや日月やぐらなどがあり、平場からは重要文化財に指定された大型の青磁鉢3点が出土していた。しかし、2008年(平成20)の発掘調査によって、やぐらは丘陵の上・中・下段に広がって全部で64基あったこと、また建物遺構や火葬跡なども確認され、壺やかわらけなどの遺物から、土地造成の時期は、時政没後の13世紀後半であることがわかった。丘陵部のやぐらと平場の遺構が一体で遺存しているところは鎌倉では数少なく、中世都市鎌倉において行われた谷戸の開発と、祭祀信仰のあり方を知るうえで貴重なことから、2010年(平成22)に国の史跡に指定された。JR横須賀線ほか鎌倉駅から湘南京急バス「杉本観音」下車、徒歩約20分。

出典 講談社国指定史跡ガイドについて 情報

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