好酸球性肉芽腫(読み)こうさんきゅうせいにくげしゅ(その他表記)Eosinophilic granuloma

六訂版 家庭医学大全科 「好酸球性肉芽腫」の解説

好酸球性肉芽腫
こうさんきゅうせいにくげしゅ
Eosinophilic granuloma
(運動器系の病気(外傷を含む))

どんな病気か

 血液を作る骨髄細胞のうち、組織球と呼ばれる大型の細胞が増殖した病気です。顕微鏡で見ると、この組織球のまわりにはエオジンという染色液によく染まる赤い細胞質と2つの揃った核が特徴の好酸球が増えるので、この病名ついています。

 ほとんどが20歳以下、とくに10歳以下の子どもに発生します。通常はひとつの骨病変で、その部の痛みを訴え、X線写真では時に悪性骨腫瘍骨髄炎(こつずいえん)に似ることがありますが、予後は良好で自然消退が期待できますので、診断が重要になります。

 しかし、同一の細胞からなっていても、骨病変が多発し、リンパ節がはれたり、皮膚の病変、さらに肝臓()臓のはれ、そして血小板の減少などの全身症状を起こすものがあります。レッテラール・ジーベ病、ハンド・シェーラー・クリスチャン病と呼ばれています。こういった場合には生命を脅かす危険もあるので、全身疾患として薬剤治療を行う必要があり、通常は小児科で診療されています。

 この2つの疾患と好酸球性肉芽腫で増殖する細胞は同じと考えられており、3つの病気はまとめてランゲルハンス細胞組織球症(さいぼうそしききゅうしょう)と呼ばれます。同じ原因で病気が起こるのにもかかわらず、なぜ好酸球性肉芽腫が単発で、しかも自然消退するような軽い病態で終わるのかは、現在のところ明らかとなっていません。

症状の現れ方

 痛みを訴えて気がつくことがほとんどです。いわゆる成長痛のように、毎日いろいろなところを痛がるのではなく、痛みの場所は一定しています。

検査と診断

 X線写真では、はっきりとした骨破壊が特徴です。骨の周囲にはさらに骨がみられ、これを骨膜反応と呼びます(図46)。骨膜反応自体は反応性のもので、好酸球性肉芽腫自体ではありませんが、骨膜反応はあとで出てくる悪性の骨肉腫ユーイング肉腫、あるいは骨髄炎(こつずいえん)でもみられるため、診断が重要になります。

 X線写真像が骨の悪性腫瘍骨髄炎に似ているので、組織の一部をとって病理組織診断をつけることが大切です。

治療の方法

 組織診断がつけば、骨折予防の処置を行ってX線検査による経過観察を行います。痛みがよくならず、X線でも軽快しないで骨折の危険性が高い時には、手術によって掻爬(そうは)することもあります。

病気に気づいたらどうする

 1カ所の骨の病変の場合には整形外科で治療が行われますが、ほかの骨や内臓や皮膚にも異常があったり検査で見つかったりすれば、小児科を受診することが必要です。

岡田 恭司


出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

家庭医学館 「好酸球性肉芽腫」の解説

こうさんきゅうせいにくげしゅ【好酸球性肉芽腫 Eosinophilic Granuloma】

[どんな病気か]
 骨腫瘍(こつしゅよう)によく似た病気(骨腫瘍類似疾患(こつしゅようるいじしっかん))の1つです。
 骨に単発性、ときには多発性の骨破壊(こつはかい)がおこる病気で、痛みをもって発症します。
 原因は不明ですが、組織をとって検査すると、組織球と呼ばれる細胞や白血球(はっけっきゅう)、とくに好酸球が出現しているのがわかります。
 よくおこる部位は、大腿骨(だいたいこつ)(ももの太い骨)や上腕骨(じょうわんこつ)などの長管骨(ちょうかんこつ)(大きくて長い管状の骨)です。
 そのほか、鎖骨(さこつ)、骨盤(こつばん)、脊椎(せきつい)などにもおこります。
 脊椎に発症した場合は、脊椎がもろくなるために、しばしばつぶれて扁平(へんぺい)になります。これはカルベ扁平椎(へんぺいつい)と呼ばれます。
 10歳未満の子どもに多くみられる病気です。
[治療]
 治療としては、骨破壊がおこっている部位をかきとる(掻爬(そうは))、ステロイド薬(副腎皮質(ふくじんひしつ)ホルモン薬)を使用する、あるいは少量の放射線を患部に照射するといった方法が行なわれます。
 この病気は良性で、生命に対する危険性はありません。
 しかし、この病気と類似しているレッテレル・ジーベ病は、死亡率の高い病気です。
 また、同じような病気であるハンド・シューラー・クリスチャン病も治りにくい病気です。
 したがって、これらの病気とまちがえないように、診断には、十分な注意が必要です。

出典 小学館家庭医学館について 情報

世界大百科事典(旧版)内の好酸球性肉芽腫の言及

【小児癌】より

…治療としては癌と同じように化学療法を行う。軽症例としてハンド・シュラー=クリスチャン病Hand Schüller‐Christian diseaseと骨の好酸球性肉芽腫とがあり,同一範疇(はんちゆう)の疾患と考えられている。
[診断と治療]
 小児癌は,発生数が少ないし,特有の症状はないので,診断できるかどうかは,それが癌かもしれないと疑うかどうかにかかっている。…

※「好酸球性肉芽腫」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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