婦人論(読み)ふじんろん

精選版 日本国語大辞典 「婦人論」の意味・読み・例文・類語

ふじん‐ろん【婦人論】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙 婦人はいかにあるべきかを考え、女性教育社会地位の向上を主張する論。
    1. [初出の実例]「維新以来世の文明が段々進歩するに連れて婦人論(フジンロン)と云ふものがなかなか喧(かまびす)しくなって」(出典:福沢先生浮世談(1898)〈福沢諭吉〉)
  2. [ 2 ] ( 原題[ドイツ語] Die Frau und der Sozialismus ) 社会科学書。ドイツ人アウグスト=ベーベル著。一八七九年刊。社会主義学者としての著者が不法な監禁獄中で起筆し、女性の市民社会での解放と地位の向上を主張したもの。ビスマルクの社会主義鎮圧法の下で発禁となり、一八九〇年の同法廃止による解禁まで秘密出版された。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「婦人論」の意味・わかりやすい解説

婦人論
ふじんろん

正称は『婦人と社会主義』Die Frau und der Sozialismus。A・ベーベルの著書初版は1879年ライプツィヒで出版された。好評を博したがビスマルクの社会主義鎮圧法によりただちに禁止されたため、1883年に内容を補足し『過去、現在、及び将来の婦人』と改題して出版された。これも禁止処分を受けたが秘密出版を続け、1890年の鎮圧法廃止による解禁までに二十数版を重ねた。1895年に原名に戻した後も増補改訂を繰り返して1909年50版を数えた。ベーベルはこの本の準備を1870年から始めており、文字どおりのライフワークとなった。本書は四編よりなる。第一編「過去の婦人」では原始社会から18世紀までの婦人の社会的地位や力量変容を説き、第二編「現代の婦人」では売春や生活手段となった結婚、職業生活等から現代婦人の不遇な状態を明らかにし、男女同権たるべきことを説いた。第三編「国家と社会」では現代婦人の不遇な状態を生み出している資本主義社会原理に触れ、第四編「社会の社会化」で社会主義社会の根本法則と実現の過程、そこでの国家の消滅や宗教、教育、芸術等のあり方と並んで婦人の地位と生活の変化を描き、「未来は社会主義のもの……労働者と婦人のもの」として、婦人解放を人類解放として位置づけた。

[大木基子]

『草間平作訳『婦人論』上下(岩波文庫)』

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百科事典マイペディア 「婦人論」の意味・わかりやすい解説

婦人論【ふじんろん】

ドイツの社会主義者ベーベルの著作。《Die Frau und der Sozialismus》。1883年刊,正しくは《婦人と社会主義》。女性の歴史と現状を被抑圧者として描きだし,その状態を痛烈に批判すると同時に,女性の真の解放は社会主義革命を通じてのみ達成されることを強調した。結語〈未来は婦人と労働者のものである〉は有名。

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