嫌気性菌(読み)けんきせいきん

百科事典マイペディア 「嫌気性菌」の意味・わかりやすい解説

嫌気性菌【けんきせいきん】

遊離酸素がなくとも増殖できる細菌。酸素のないところでしか発育できない偏性嫌気性菌と,酸素があっても発育のできる通性嫌気性菌とがある。メタン細菌,大部分の光合成細菌破傷風菌などは前者の代表。これらの細菌の代謝には低い酸化還元電位保持が必要で,これを酸素の存在が妨げるためである。有気呼吸を行わず,嫌気性発酵によってエネルギーを得る。培養するには遊離酸素との接触を断つか,弱い還元剤培地に加える。通性嫌気性菌は大腸菌のように,酸素のあるときには呼吸によって,酸素の少ないときには発酵でエネルギーを得るものが多いが,乳酸菌などは酸素があっても発酵に頼る。→好気性菌
→関連項目ガス壊疽サルモネラ菌赤痢菌大腸菌脱窒破傷風菌ビフィズス菌ブドウ(葡萄)球菌ボツリヌス菌連鎖球菌

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改訂新版 世界大百科事典 「嫌気性菌」の意味・わかりやすい解説

嫌気性菌 (けんきせいきん)
anaerobic bacteria

発育のさい遊離酸素量が少ないところでないと発育しない細菌。好気性菌対語。酸素を嫌う程度は菌種によって異なり,遊離酸素のほとんどないところでのみ発育できる菌を偏性嫌気性菌と呼び,酸素がかなりあっても発育できる菌を通性嫌気性菌と呼ぶ。偏性嫌気性菌は,クロストリジウム,メタン細菌,硫酸塩還元細菌,大部分の光合成細菌などである。クロストリジウムは胞子をもつ嫌気性杆菌で,破傷風菌やボツリヌス菌などのように強力な毒素を産生する菌が多い。偏性嫌気性菌のエネルギーの獲得の仕方は,発酵,光合成および硫酸塩などを還元・利用するものである。偏性嫌気性菌を培養するために,酸素を取り除いた種々の培養法が考案されている。通性嫌気性菌は,大腸菌のように,酸素の存在するときには呼吸によって,酸素の少ないときには発酵によってエネルギーを獲得するものが多い。
細菌
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栄養・生化学辞典 「嫌気性菌」の解説

嫌気性菌

 遊離の酸素のない状態生育,増殖する細菌.酸素があるとまったく生育できない偏性嫌気性菌と,酸素の有無にかかわらず生育可能な通性嫌気性菌がある.

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世界大百科事典(旧版)内の嫌気性菌の言及

【細菌】より

…培養条件が整った場合,大腸菌など大多数の細菌の分裂の周期は20分であるが,細菌の増殖速度には,栄養分の有無のほか,酸素,温度,湿度,培地のpHや浸透圧などが関係する。 細菌は酸素に対する関係によって,酸素存在下のみで生育する(偏性)好気性菌,無酸素条件下のみで生育する(偏性)嫌気性菌,酸素の有無にかかわりなく生育できる通性嫌気性菌に分けられる。嫌気性菌は,エネルギーを発酵によって得,好気性菌は呼吸によって得ている。…

※「嫌気性菌」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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