デジタル大辞泉
「子宮体癌」の意味・読み・例文・類語
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
子宮体癌(子宮頸癌・子宮体癌・卵巣癌)
定義•概念
子宮体部の内膜の腺上皮細胞を発生母地として発生する上皮性悪性腫瘍を,子宮体癌(体癌)という.
分類
組織学的には,体癌のほとんどは内膜腺に類似した形態を示す類内膜腺癌であり,構造異型の程度により分化度を分類する.また最近,体癌は,エストロゲン依存性の有無により,生物学的悪性度が異なる2つのタイプに分類されると考えられている(表12-20-1).
原因•病因
リスク因子としては,肥満,高血圧,糖尿病といったメタボリック症候群に関連したものや,月経不順,多囊胞性卵巣,不妊症,妊娠分娩歴がない,などホルモン環境に関連したものがあげられる.また薬剤では,乳癌術後のタモキシフェン投与や,更年期障害の治療におけるエストロゲン製剤の単独投与などがあげられている.
疫学
近年,生活習慣の欧米化などに伴って体癌は増加傾向にある.年齢別の罹患率は,40歳代後半から増加し,50~60歳代にピークを迎え,その後減少する.
臨床症状
初発症状は,不正性器出血が大部分である.特に閉経後の不正性器出血では本症を念頭におく必要がある.
診断
一般的に閉経後の子宮内膜は菲薄化しているため,経腟超音波検査にて内膜の異常肥厚を認める場合は,内膜細胞診ならびに内膜組織診を行う.内膜組織診で確定できないときは内膜全面掻爬を行い診断を確定する.病変の広がりを評価するために子宮鏡検査やMRI,CT検査を行い,頸部浸潤や筋層浸潤の程度,リンパ節や遠隔臓器への転移の有無の診断を行う.体癌に特異的な腫瘍マーカーはないが,CA125,CA19-9が約1/2の症例で上昇する.
鑑別疾患
子宮内膜増殖症,子宮内膜ポリープ,粘膜下筋腫などと鑑別することが必要である.
治療
手術療法,化学療法,放射線療法,ホルモン療法の4つの治療方法がある.治療の第一選択は手術療法であるが,病期に応じて,これらを単独にあるいは組み合わせて治療を行う.手術療法としては子宮全摘出術に加え,両側の付属器を摘出する.筋層浸潤を認める症例では,骨盤あるいは傍大動脈リンパ節郭清が追加される.化学療法としては,プラチナ製剤を中心にアントラサイクリン系,タキサン系製剤を組み合わせる.初回治療としての放射線療法の適応は,手術が不可能な症例に限られる. 妊孕性温存のための高用量黄体ホルモン療法は,高分化型類内膜腺癌で,かつ筋層浸潤がない症例に限り,インフォームドコンセントを取った上で,治療経験を十分に有する施設で行う.
予後
各進行期における5年生存率は,Ⅰ期90%,Ⅱ期80%,Ⅲ期60%,Ⅳ期20%程度である.[青木大輔・森定 徹]
■文献
日本婦人科腫瘍学会編:子宮体がん治療ガイドライン 2009年版,金原出版,東京,2009.
日本産科婦人科学会,日本病理学会,他編:子宮体癌取り扱い規約 第3版,金原出版,東京,2012.
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
世界大百科事典(旧版)内の子宮体癌の言及
【子宮癌】より
…子宮腟部の中央には頸管が開口しており外子宮口と呼ばれている。子宮癌には子宮頸部に発生する(その多くは外子宮口付近に発生する)子宮頸癌cancer of the uterine cervix(略して頸癌)と,子宮体部に発生する子宮体癌cancer of the uterine body(略して体癌)とがある。頸癌と体癌はたんに発生した場所が異なるだけでなく,発生しやすい年齢や発生を助長している因子などで違いがあり,また診断,治療の方法がかなり異なるので,両者を区別している。…
※「子宮体癌」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」