学校健診でよく見られる不整脈

六訂版 家庭医学大全科 の解説

学校健診でよく見られる不整脈
(循環器の病気)

WPW症候群

 WPW症候群(コラム)では、上室性頻拍発作(じょうしつせいひんぱくほっさ)があったり、動悸の症歴があったりする場合には、専門医の診察を受けて精密検査・治療を行う必要があります。

 治療には坑不整脈薬の内服による治療と、高周波カテーテル・アブレーションによる治療とがあります。後者は、成功率が高く合併症の発生率も極めて低いため、ある程度の年齢に達していればすすめられる根治的な治療方法です。

 成長とともに、心電図上ではWPW症候群を示さなくなることもありますが、治ってしまったわけではなく、逆に発作性上室性頻拍になりやすくなることもあります。

期外収縮(きがいしゅうしゅく)

 上室期外収縮と心室期外収縮は、その頻度や悪性度を24時間ホルター心電図や運動負荷心電図検査で調べる必要がありますが、上室性頻拍や心室頻拍などの不整脈がないかぎり治療の必要はありません。定期的な経過観察で十分です。期外収縮は成長とともに消失する場合もあります。

 原因となる心疾患の有無聴診、胸部X線、心エコー(超音波)などの検査でチェックすることも必要です。

洞性徐脈(どうせいじょみゃく)房室(ぼうしつ)ブロック

 洞性徐脈は、心拍数が毎分50拍以下の徐脈と定義されているため、しばしば健康診断の心電図で指摘されます。しかし、治療の対象になるのは徐脈や心停止に起因する失神めまい、立ちくらみ、息切れ()疲労感(疲れやすい)などの症状がある場合であり、その頻度は学童では多くありません。

 24時間ホルター心電図検査による最低心拍数、最長心拍間隔と症状の有無のチェックが必要です。睡眠中や早朝迷走神経(めいそうしんけい)興奮時にだけ出現する洞性徐脈は学童に多く認められますが、成長とともに消失することが多く、問題になることは多くありません。

 房室ブロックもたびたび学童の健診心電図に見受けられる異常ですが、第Ⅰ度房室ブロックと第Ⅱ度房室ブロックのほとんどは問題ありません。第Ⅱ度房室ブロックの一部分と第Ⅲ度房室ブロック(完全房室ブロック)は治療の必要がある場合もあります。

 睡眠中や早朝の迷走神経興奮時にだけ認められる房室ブロックも、成長とともに消失し、問題のないことが多い心電図異常です。運動負荷心電図によって、房室ブロックの程度が運動時に悪化するか改善するかを評価することも有用です。

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

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