官尊民卑(読み)カンソンミンピ

デジタル大辞泉 「官尊民卑」の意味・読み・例文・類語

かんそん‐みんぴ〔クワンソン‐〕【官尊民卑】

官吏国家に関係する物事を尊び、民間の人や物事をそれに服従するものとして軽んじること。

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精選版 日本国語大辞典 「官尊民卑」の意味・読み・例文・類語

かんそん‐みんぴクヮンソン‥【官尊民卑】

  1. 〘 名詞 〙 政府や官吏を尊いものとし、一般人民や民間の事を卑しいものとすること。また、その考え。
    1. [初出の実例]「如何に官尊民卑の今日なればとて」(出典:時事新報‐明治二一年(1888)八月一八日)

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改訂新版 世界大百科事典 「官尊民卑」の意味・わかりやすい解説

官尊民卑 (かんそんみんぴ)

政府や官吏を尊いものとし,一般人民や民間の事業を卑しいものとする考え。福沢諭吉の《福翁百話》のなかに,〈吾々学者流に於て人権平等の論を論ずること久し。官尊民卑も亦この論旨に反するものなるが故に云々〉とある。このような考え自体は日本に限ってみられるものではない。一般に絶対主義のもとでは,君主もろもろの価値の源泉とされ,これに近いところにある者ほど尊い存在であると考えられていた。また,それによって国家秩序が保たれていたのである。栄典制度のうえで,官吏がつねに優遇されてきたのは,その現れである。このような状態は,絶対主義が崩壊し,君主が価値の源泉としての機能を失って以後も,それほど変わることがなかった。たとえば,近代的な官吏も高い身分的な社会的尊敬を追い求め,たいていの場合それを享受する,とM.ウェーバーも述べている。もっとも,近代的な官吏の社会的尊敬はむしろ学歴と結びついており,それだけ機能的な性格を強めていることは確かであろう。日本の場合も,事態の本質は変わらない。ただ,ここでは官民間の落差がひときわ大きく,官吏にあらざれば人にあらずとする風潮さえあった。これは,一つには明治政府の指導者の多くが下級士族の出身であり,社会的尊敬の点で劣位にあったので,それを埋め合わせるためことさらに天皇を神聖化しなければならなかったためであろう。そして,この特質は,太平洋戦争後の制度改革により天皇の官吏が国民公僕に転身して以後も消滅することなく,学歴に対する異常な関心を通じて再生産され,行政指導などの政府活動を支える心理的基盤を提供しつづけているのである。
官僚
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「官尊民卑」の意味・わかりやすい解説

官尊民卑
かんそんみんぴ

一般に官僚を尊いものとし,民衆をそれに従う卑しいものとする考え方で,後発資本主義国家においては,国家権力によって政治的集権化と資本の蓄積が急速になされるため,官僚の側での優越意識と民衆の服従志向が強まることとなる。日本の場合,天皇制的価値原理がこの傾向を一層強化した。明治初期にはこれが「有司専制」となって現れ,近代官僚制確立以後も官僚は「民衆の公僕」ではなく,「天皇の官僚」として民衆統治にあたった。

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四字熟語を知る辞典 「官尊民卑」の解説

官尊民卑

政府や官吏を尊いものとし、一般人民や民間の事を卑しいものとすること。また、その考え。

[使用例] 官尊民卑の考えは、たとえ村の有力者でも伊貝の頭には浸み込んでいた[島木健作*生活の探求|1937~38]

[使用例] 官尊民卑という考え方は、社会全体がそうなのだから、にわかにそれを改める訳にはいかないにしても[石坂洋次郎*青い山脈|1947]

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