会社の組織・活動を定めた根本規則(実質的意義の定款)。これを記載した書面・記録した電磁的記録を定款ということもある(形式的意義の定款)。株式会社を設立するには発起人が定款を作成し、これに署名または記名捺印(なついん)(電子署名も可)することに始まる(会社法26条1項・2項)。定款は、その内容を明確にして後日の紛争や不正行為を予防するため、公証人による認証を必要とし(同法30条1項)、その認証を受けなければ効力を生じない。一般に、設立当初に作成された定款を原始定款という。
[戸田修三・福原紀彦]
定款の記載事項は、その法的効力によって、絶対的記載事項・相対的記載事項・任意的記載事項に分けられる。
[戸田修三・福原紀彦]
定款にかならず記載しなければならない事項で、その一つの記載を欠いても定款全体が無効となるもの(会社法27条)。(1)会社の目的、(2)商号、(3)本店所在地、(4)設立に際して出資される財産の価額またはその最低額、(5)発起人の氏名および住所(同法27条1号~5号)、(6)発行可能株式総数がある。なお、発行可能株式総数(いわゆる授権株式数)は、定款作成時に定める必要はなく、設立手続完了時までに定款で定めればよい(同法37条1項、98条)。
[戸田修三・福原紀彦]
定款に記載しなくても定款自体の効力には影響はないが、記載しなければその事項について法律上の効力を生じないもの(同法29条)。代表的なものには公告方法と変態設立事項がある。
〔1〕公告方法 (1)官報に掲載する方法、(2)日刊新聞紙に掲載する方法、(3)電子公告のいずれかを定款で定めることができる(会社法939条1項・2項)。定款で定めないと官報に掲載する方法をとることになる(同法939条4項)。
〔2〕変態設立事項 「危険な約束」とよばれるものであり(同法28条)、具体的には、(1)現物出資、(2)財産引受け、(3)発起人の報酬・特別利益、(4)設立費用がある。これらの変態設立事項は、会社の財産的基礎を害するおそれがあるため、原始定款の相対的記載事項とされ、原則として裁判所が選任する検査役の調査を受けることを要し、そこで不当と認められた場合には裁判所または創立総会において変更される(会社法33条1項・7項)。
[戸田修三・福原紀彦]
社団法人(公益法人,会社,各種の協同組合等)の組織・活動についての根本規則(民法38条,商法62条,72条,342条,有限会社法5条,中小企業等協同組合法27条等),およびこれを記載した書面(民法37条,商法63条,166条,有限会社法6条,中小企業等協同組合法33条等)をいう。財団法人の寄付行為に相当する。社団法人の設立を担当する者(設立者,発起人)が,これを定めて書面に記載する。株式会社および有限会社ではこの書面は公証人の認証を受けなければその効力を生じない(商法167条,有限会社法5条2項)。定款には絶対的記載事項と相対的記載事項とがある。前者は,その記載が欠け,あるいは違法な場合には定款全部が無効となるような事項,例えば,法人の目的,名称,社員,機関,資産,事務所など組織に関する基本的事項であり,各種の法人につき法律で明示されている(民法37条,商法63条,148条,166条,有限会社法6条,中小企業等協同組合法33条1項等)。後者は,それを定めるかどうかは自由であるが,いったん定めた場合は,定款に記載しないと効力を生じない事項であり,現物出資や財産引受けなどの変態設立事項はこれに属する(商法168条,有限会社法7条,中小企業等協同組合法33条3項等)。さらに,任意的記載事項として,強行法規,公序良俗,その法人の本質に反しない限りどんな事項も任意に定款で定めることができる。しかし,これもいったん定款で定めればその変更には定款変更の手続を必要とする。
なおこのほか必ずしも社団法人とはいえない特殊法人の根本規則も定款と称している(日本銀行法9条,放送法11条等)。
このように,定款は社団法人の根本規則であるが,その本質や強行法規・公序良俗に違反しない限り,自主的にこれを変更することができる。これを定款変更という。定款変更は,社団法人の構成員たる社員その他の利害関係者に重大な影響を及ぼすところから,社団法人の最高の意思決定機関たる社員総会,株主総会等の承認を得なければならないものとされている。その要件は社団法人の種類ごとに定められているが,多数決による場合には,社員の固有の権利(たとえば議決権)を侵したり,社員平等の原則に反してはならないと解されている。定款変更の手続としては,たとえば公益法人では総社員の4分の3以上の同意と主務官庁の認可(民法38条),合名会社,合資会社では総社員の同意(商法72条,147条),株式会社および有限会社では,株主総会または社員総会の特別決議(商法342条,343条,有限会社法47条,48条)を要する。また協同組合では,組合員総会の特別決議のほか,行政官庁の認可が必要である(中小企業等協同組合法51条,53条等)。このような法律上の手続による定款変更のほか,事実の変更により当然に定款が変更される場合がある(社員の死亡,営業所の地名変更等)。なお書面としての定款の変更は,これら実質的変更の結果にすぎず,法人の通常の業務執行行為の一部と考えられている。また会社更生手続中の定款変更については,特則がある(会社更生法52条2項,211条2項,219条,251条,249条等)。
執筆者:岸田 雅雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
…営利を目的とする社団法人を会社といい,通常,社団法人という場合には,公益社団法人を指している。
[設立手続]
公益社団法人を設立するためには,社団法人を設立しようとする2人以上の者が,設立の意思をもって法人の根本規則である定款を定めて書面にしなければならない。この定款の作成が実質的な設立行為となる。…
※「定款」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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