宛て文（読み）あてぶみ

精選版 日本国語大辞典

あて‐ぶみ【宛文・充文】

1. 〘 名詞 〙
2. ① 物資、土地などを官から給与する場合の通達書。
   1. [初出の実例]「民部省位田宛文、民部田所 改_二給従五位上藤原朝臣_一位田拾町事」(出典：朝野群載‐八・寛治八年（1094）五月二〇日・民部省宛文)
3. ② 官職などに補任する辞令。
   1. [初出の実例]「去夕使部持_二来仁王会行事僧供充文_一」(出典：権記‐長保四年（1002）一〇月六日)
4. ③ 荘園領主が、作人の申請に対し、特定土地の用益を割りあてる文書。⇔請け文。
   1. [初出の実例]「将仰_二正理之貴_一、令_レ弁_二官物未進_一、兼任_二充文旨_一、令_二耕作番殖_一矣」(出典：東寺百合文書‐せ・応徳二年（1085）五月一四日・東寺領伊勢国川合大国荘司解)
5. ④ 費用を割り当てる文書。割当高を記した文書。配符。
   1. [初出の実例]「知行八ケ国宛文并返抄等、載_二別目録_一注_二進之_一」(出典：吾妻鏡‐建久元年（1190）六月二六日)
6. ⑤ 中世、所領をあてがう文書。あておこないじょう。あてがいじょう。
   1. [初出の実例]「右件畠者、以_二勝慶阿闍梨宛文_一行善知行之処、前妻丹生守又取_二勝慶之宛文_一、可_レ令_二領掌_一之由」(出典：高野山文書‐寛元三年（1245）六月二八日・高野嶺荒川庄畠地充文)
7. ⑥ 敬意を表するために、書状を受け取るべき人に直接宛てないでその下位の人に宛て、目的の人にその内容が伝わるようにした書状。〔日葡辞書（1603‐04）〕
8. ⑦ 論義の課題となった経疏の文章。
   1. [初出の実例]「保延二年始行〈略〉以_二大乗義章_一為_二宛文_一分_二二百余科_一」(出典：東大寺続要録（1281‐1300頃）)

出典　精選版 日本国語大辞典