デジタル大辞泉 「宜」の意味・読み・例文・類語 ぎ【宜】[漢字項目] [常用漢字] [音]ギ(呉)(漢) [訓]むべ うべ よろしい程よくかなっている。「機宜・時宜・辞宜・適宜・便宜」[名のり]すみ・たか・なり・のぶ・のり・のる・まさ・やす・よし[難読]宜乎うべなるかな・禰宜ねぎ むべ【▽宜/▽諾】 [副]「うべ」に同じ。「吹くからに秋の草木のしをるれば―山風をあらしといふらむ」〈古今・秋下〉 うべ【▽宜/▽諾】 [副]《平安時代以降は「むべ」と表記されることが多い》肯定する気持ちを表す。なるほど。いかにも。むべ。「山河のさやけき見れば―知らすらし」〈万・一〇三七〉 出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
精選版 日本国語大辞典 「宜」の意味・読み・例文・類語 よろし・い【宜】 〘形口〙 よろし 〘形シク〙 古代では「よし」が積極的な判定を下すのに対して、「よろし」は消極的で、「よし」よりも低い評価を表わす。① 好ましい。心にかなう。満足できる。※古事記(712)上・歌謡「沖つ鳥 胸(むな)見る時 羽叩ぎも 此し与呂志(ヨロシ)」② 適当である。ふさわしい。正しい。→よろしく。※弁中辺論延長八年点(930)中「此が中に応(ヨロシキ)が如く、其の義を顕示すべし」③ 凶に対して、吉である。※蜻蛉(974頃)下「この十九日、よろしき日なるをとさだめてしかば」④ まずまずの程度である。十分ではないが、まあよい。悪くない。※土左(935頃)承平五年一月一八日「この歌どもを、すこしよろしと聞きて」※浮世草子・西鶴織留(1694)六「相応の所へよろしく仕付事のならぬ者」⑤ 特に、身分・家柄・経済状態・教養などがまずまずの程度である。※枕(10C終)五七「若くよろしき男の、下衆女の名よび馴れていひたるこそにくけれ」⑥ 特に、健康の状態がまずまずの程度である。病気が小康状態である。※源氏(1001‐14頃)若紫「かの山寺の人はよろしくなりて、いで給ひにけり」⑦ 平凡である。なみ一通りである。※大和(947‐957頃)一六八「妻は三人なむありけるを、よろしくおもひけるには、なほ世に経じとなむ思ふと、二人にはいひけり」⑧ 静まるようである。おさまりそうである。※今昔(1120頃か)一四「法花経講ぜさせなど為る程、地獄の熖宜く見ゆ」⑨ 是認できる。許可できる。さしつかえない。※浪花聞書(1819頃)「よろしいよって よひから也」⑩ 相手の言ったことを了解、了承した時、また、満足ではないが、それで仕方がないと容認、また、放任していう語。わかった。※吾輩は猫である(1905‐06)〈夏目漱石〉二「よろしい分りました」[補注](1)連用形「よろしく」に見られる、いくつかの特殊な意味、用法は副詞として別項で扱った。(2)動詞「よる(寄)」からヨラシという形容詞が派生し、それがヨロシに変化したもので、その方へ近寄りたいというのが原義だという説が有力である。よろし‐げ〘形動〙よろし‐さ〘名〙 よろしく【宜】 〘副〙 (形容詞「よろしい」の連用形から。「宜敷」はあて字)① (漢文訓読で「宜」の字を「よろしく…べし」と読むところから) そうすることが当然であったり、必要であったりするさまを表わす語。すべからく。まさに。ぜひとも。必ず。※法華義疏長保四年点(1002)四「宜しく、之に順同すべしといふぞ」② その場の成り行きや雰囲気に適合するようにするさまを表わす語。よいほどに。ほどよく。適当に。※自画像(1920)〈寺田寅彦〉「絵具の方ですっかり合点してよろしくやってくれるのを」③ 特に、歌舞伎脚本のト書に用いて、その場にふさわしい適当な演技での意にいう。※歌舞伎・韓人漢文手管始(唐人殺し)(1789)二「二重舞台千嶋正が後ろに、伴蔵、丈助始近習の侍大勢並び、いづれも宜敷」④ 好意や案ずる心を他に伝言してもらう時にいう挨拶の語。また、人に何かを頼んだりする時に添える語。※吾輩は猫である(1905‐06)〈夏目漱石〉二「乍恐縮かの猫へも宜しく御伝声奉願上候」⑤ 上に記述された内容を受け、いかにもそれに似て、いかにもそれらしくの意を表わす語。※当世書生気質(1885‐86)〈坪内逍遙〉九「高麗人(こまびと)よろしくてふ麦藁帽子で、ジット頭を制へつけて」※浮雲(1887‐89)〈二葉亭四迷〉二「どうした、土左的宜敷(ヨロシク)といふ顔色だぜ」 ぎ【宜】 〘名〙 その場にあてはまって都合がよいこと。※地蔵菩薩霊験記(16C後)一二「よろしく万事の成敗宜(ギ)に中(あたり)ければ」 よろしき【宜】 〘名〙 (形容詞「よろし」の連体形から) ちょうどよい程度、状態。※増鏡(1368‐76頃)七「よろしきをだに、人の親はいかがは見なす」 よろし【宜】 〘形シク〙 ⇒よろしい(宜) 出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報