実際原価(読み)じっさいげんか(英語表記)actual cost

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「実際原価」の意味・わかりやすい解説

実際原価
じっさいげんか
actual cost

製品の製造および販売,一般管理のために実際に要した原価 (実際製造原価,実際販売費および管理費,実際総原価) をいう。原価は一般的に財貨の消費量に価格を乗じることによって計算されるが,実際原価は厳密にいえば実際消費量と実際価格の積として求められる。しかし日本の原価計算基準は実際原価をややルーズに解し,消費量に実際消費量を用いるかぎり,価格には予定価格などを用いても実際原価であるとしている。また実際消費量についても経営の正常な状態を前提としての実際消費量であり,異常な状態 (ストライキ風水害,異常仕損など) を原因とする消費量は実際消費量と解していない。実際原価に対立するものとして,財貨の消費量を科学的,統計的調査に基づいて能率尺度となるように予定し,かつ予定価格または正常価格をもって計算した原価である標準原価がある。 (→実際原価計算 , 標準原価計算 )  

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世界大百科事典(旧版)内の実際原価の言及

【原価】より


[原価管理用の原価]
 原価管理のためには,原価を製品別に集計しても役立たず,製造第1課など,原価責任センター別に集計しなければならない。また原価の実際発生額を責任センター別に集計するだけでは不十分で,あらかじめ科学的に作業の物量標準を定め,それに基づいて原価の達成目標を標準原価として指示しておき,標準原価と実際原価とを比較して差異を計算し,差異の発生原因を管理可能差異と管理不能差異とに分析し,改善策を講ずることが効果的である。
[利益管理用の原価]
 利益管理のためには,原価を営業所や事業部などの利益責任センター別に集計するとともに,原価は製品の売上量の増減に応じて変化する原価(変動費)と変化しない原価(固定費)とに分類し(〈固定費用・可変費用〉の項参照),それらを総合予算の中に組み入れて,責任者別に管理可能費と管理不能費とに区分しなければならない。…

【原価管理】より

…それは,伝統的には原価統制cost controlと同義として理解されてきた。すなわち,標準原価計算や標準直接原価計算などの手段を利用し,達成目標としての標準原価を設定して,工場の各管理者の日常的な指揮監督活動に方向を与え,かつ標準原価と実際原価との差異を測定・分析して,不利差異を解消する修正活動を指示することを期待されてきたのである。そこでは,(1)標準原価の科学的設定,(2)各管理者の統制範囲に対応した達成目標の指示,(3)原価差異の迅速な報告,(4)原価差異原因の分析,(5)原価意識の高揚,(6)原価管理組織の整備,などが実践的に解決されねばならない。…

※「実際原価」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」