フランスの作家エクトル・マロの児童文学作品。1878年刊。イギリスの名門に生まれながら盗まれて捨てられた少年レミは、ビタリスという旅芸人とともにフランス各地を旅して歩く。ビタリス老人の死後、花つくりの一家に助けられて暮らすが、その家の没落のためふたたび旅に出、炭坑町の事故で九死に一生を得る。やがて実の親は、レミが旅の途中しばらくいっしょに暮らした遊覧船「白鳥号」のミリガン夫人とわかり、幸福な日々を送ることになる。フランスの地理・風俗を紹介する意図を含んで書かれたもので、旅を通じての少年の成長の過程のなかに当時のフランスが描かれている。日本では1901年(明治34)『まだ見ぬ親』(五来素川(ごらいそせん)訳)の題名で初めて訳されて以来、衰えぬ人気を保っている。
[神宮輝夫]
『鈴木三重吉訳『家なき子』上下(角川文庫)』
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