封建時代に主君からその家臣または,これに準ずる階級の者に給与された知行,俸禄をいう。家禄は中世にもみられるが,幕藩制時代の近世に典型的にみられる。家禄は封建関係において,主君に対する家臣の奉公への反対給付として,主君から家臣に給与されたものであるが,近世では将軍と大名・旗本・御家人,大名と藩士,旗本・御家人・藩士と家臣との間にみられ,また将軍と公家・寺社との間でもこれに準じた家禄がみられる。家禄には土地給与の知行,蔵米給与の切米・扶持米,貨幣給与の給金などの種別があり,家禄の種類や大小によって身分格式の上下差別がおこなわれた。ただし,知行取は時代の下降につれて漸減化・蔵米取化の傾向をたどったので,蔵米取の俸禄制が家禄の中心となった。家禄制度は禄制改革による大幅削減を経て,明治新政府に継承されたが,秩禄処分により1876年華士族への封建的特権である家禄は全廃された。
執筆者:鈴木 寿
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明治初年に旧来の俸禄に代わり政府が給与した禄米。1869年(明治2)の版籍奉還を契機に公家・武士を華族・士族・卒として家禄を定めた。武士の場合,旧藩主は現石の10%,藩士は元の禄高に応じて減額。廃藩置県後も継承し,72年の卒の廃止で平民になった者にも一代限りの終身禄を与えた。73年に財政負担軽減のため家禄奉還・家禄税導入,75年に石代相場で換算した現金支給としたうえで,76年に金禄公債発行による廃止を決定した。
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… 1867年(慶応3)大政奉還によって幕府が倒れた後も大名領は朝廷の下に維持されていたが,明治政府は69年(明治2)版籍奉還を行うとともに武士階級を華・士・卒族に編成替えし,71年廃藩置県によって大名とその家臣団の土地領有権を否定した。ただししばらくの間は,知行地の年貢や俸禄に相当する家禄を,政府が肩代りして華士族に支給していたが,やがてこれも整理にむかい,75年には金禄公債を一時に交付することによって,家禄の支給をすべて打ち切り(秩禄処分),近世的知行とそれに由来する家禄も完全に消滅した。【大口 勇次郎】。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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