江戸時代における家屋敷の抵当。ここにいう家は家屋敷をさし、質といっても実は抵当である。主として町方で行われた。大坂での家質は、古くは質入主が家屋敷の売渡し証文を質取主に渡し、同時に借家請状(うけじょう)を差し入れて、その家屋敷の占有を継続するという形で行われた。1720年(享保5)に質物証文の形式として、年寄(としより)五人組の加判を受けることに改まった。証文面に利息の定めが記載され、家質に限り、質としての効力が認められた。江戸では、初めは利息付きの家質証文の形式であったと考えられるが、大坂に倣って、債務者から債権者に担保に入れる家屋敷の売券と家守(やもり)請状を渡すという形式が発達、両者は併用された。のちに質地に利子をつけることが禁ぜられた結果、後者のみが残り、かつ利息のかわりに家賃を払わせることになった。新たに家質証文が採用されたのちにもこの制度は存続した。江戸時代に家質は、確実で、利率の低い担保として、町方の金融上重要な地位を占めた。
[石井良助]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…江戸時代,幕府の認可をうけて家屋敷を質物(家質)とする貸借証文の保証をおこなった所。会所が自己資金による貸付業務をおこなった場合もある。…
…地域や職業集団に特有な人間諸関係に対応する質は,社会のすみずみまで浸透した。その働きは大きく分けて質地,家質,株質,質奉公,質物となる。(1)質地 近世農村に広範,膨大に存在した長期・中期の不動産質金融。…
※「家質」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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