日本大百科全書(ニッポニカ) 「富田木歩」の意味・わかりやすい解説
富田木歩
とみたもっぽ
(1897―1923)
俳人。東京本所(ほんじょ)に生まれる。本名一(はじめ)。生後まもなく足の自由を失い、小学校にも行けず、めんこ類で独り文字を覚えた。『ホトトギス』の原石鼎(せきてい)に俳句の指導を受け、『石楠(しゃくなげ)』に入り、『茜(あかね)』同人となり、新井声風と親交を結んで『曲水』に転じた。貧困、肺患、脚疾にさいなまれながら、独自の境涯句をつくって注目されたが、関東大震災の際、墨堤(ぼくてい)に横死した。年26歳。『木歩句集』(1934)、『木歩文集』(1934)などがある。
[村山古郷]
我が肩に蜘蛛(くも)の糸張る秋の暮
『『決定版富田木歩全集』全一巻(1964・世界文庫)』