審判妨害罪(読み)しんぱんぼうがいざい

日本大百科全書(ニッポニカ) 「審判妨害罪」の意味・わかりやすい解説

審判妨害罪
しんぱんぼうがいざい

裁判長または開廷した1人の裁判官法廷警察権に基づく命令に違反し、その職務を妨げる罪。裁判長または開廷した1人の裁判官は、法廷における裁判所の職務を妨げ、または不当な行状をする者に対し、退廷を命じ、その他法廷の秩序を維持するのに必要な事項を命じ、または処置をとることができる(裁判所法71条)。法廷外で職務を行う場合も同様である(同法72条)。これらの命令に違反し、裁判所または裁判官の職務の執行を妨げると、1年以下の懲役もしくは禁錮または8000円以下の罰金に処せられる(同法73条)。制裁刑罰であり、検察官公訴提起により通常の刑事手続によって処罰される。職権による制裁を許すものでないことや、制裁の範囲が限定されている点で、英米法法廷侮辱(コンテンプト・オブ・コート)とはまったく異なる。秩序違反に対する直接制裁は、英米法の法廷侮辱の考え方を導入した、「法廷等の秩序維持に関する法律」によって認められている。

[大出良知]

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百科事典マイペディア 「審判妨害罪」の意味・わかりやすい解説

審判妨害罪【しんぱんぼうがいざい】

裁判所または裁判官が法廷警察権に基づいて発した命令に違反して,その職務の執行を妨げる罪(裁判所法73条)。1年以下の懲役・禁錮(きんこ)または1000円以下の罰金に処せられる。英米法の法廷侮辱罪訴追なしに処罰を認めるが,日本では公訴が提起される。→法廷秩序維持法

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「審判妨害罪」の意味・わかりやすい解説

審判妨害罪
しんぱんぼうがいざい

法廷内外において,裁判所または裁判官が職務を行う際に秩序維持を目的とするその命令に違反し,職務妨害をなすことによって成立する犯罪をいう (裁判所法 73) 。暴行脅迫を手段としない点で公務執行妨害罪と区別され,検察官の公訴提起を必要とする点で法廷等の秩序維持に関する法律の制裁と区別される。審判妨害行為が裁判官に向けられた暴行脅迫によってなされたときには,公務執行妨害罪として処罰され,本罪とはならない。

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世界大百科事典(旧版)内の審判妨害罪の言及

【法廷秩序】より

…それによれば,裁判所は,手続を進めるに際し,その面前その他直接に知ることができる場所で,秩序を維持するための命令に従わず,または暴言,暴行,喧騒その他不穏当な言動で職務の執行を妨害し,もしくは裁判の威信を著しく害した者に対して,20日以内の監置もしくは3万円以下の過料を科し,または両者を併科することができる。裁判所法(1947公布)には犯罪としての審判妨害罪の規定(73条)がおかれているが,それとは別個の,当の裁判所がみずから行う制裁である。これは秩序罰の一種であって,ある妨害行為について,秩序維持の見地から制裁を受けた後,重ねて審判妨害罪として刑罰を科せられても,一事不再理(憲法39条)には抵触しない,とされている。…

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