(読み)ソン

デジタル大辞泉 「尊」の意味・読み・例文・類語

そん【尊】[漢字項目]

[音]ソン(呉)(漢) [訓]たっとい とうとい たっとぶ とうとぶ みこと
学習漢字]6年
値うちや位が高い。たっとい。「尊厳尊属尊大尊卑独尊
敬い大切にする。たっとぶ。「尊敬尊崇尊重追尊自尊心
相手の事柄に冠して敬意を表す語。「尊翰尊顔尊兄尊体尊父尊慮
仏や貴人を尊んでいう語。「三尊さんぞん至尊釈尊世尊本尊ほんぞん
[名のり]たか・たかし

み‐こと【尊/命】

御言みことを発するお方の意から。また、「御事」の意とも》
[名]上代、神や人の呼び名の下につけた敬称。「…のみこと」の形で使う。「小碓おうすの―」
「恨めしきいもの―の」〈・七九四〉
[代]二人称の人代名詞
㋐相手を敬っていう語。あなた。
「―勝ちたらば国を分かちて知らしめん」〈今昔・一六・一八〉
㋑相手を軽く見ていう語。おまえ。
「そもそも、―、なすべき官物、そのかずあり」〈今昔・二〇・三六〉
[補説]古事記の表記では「命」に統一日本書紀では、至って尊いお方には「尊」、それ以外には「命」と使い分けている。

そん【尊】

[名]中国古代の酒器。一般に、アサガオ状に開いた口と膨らんだ胴、末広がりの台をもつ。
[接頭]人に関する語に付いて、相手または相手方の人を敬意を込めていうのに用いる。
「―夫人まさに何処に行かんとするや」〈織田訳・花柳春話
[接尾]助数詞。仏を数えるのに用いる。「釈迦しゃか

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精選版 日本国語大辞典 「尊」の意味・読み・例文・類語

み‐こと【尊・命】

  1. ( 「み」は接頭語。「御事」の意 )
  2. [ 1 ] 〘 名詞 〙
    1. 神や天皇などの高貴な人に対し、尊敬の意を表わして添える語。「…のみこと」の形で用いる。
      1. (イ) 普通名詞に添える場合。
        1. [初出の実例]「八千矛の 神の美許登(ミコト)は」(出典:古事記(712)上・歌謡)
      2. (ロ) 固有名詞に添えて接尾語的に用いる場合。
        1. [初出の実例]「状葦牙の如し。便ち神と化為る。国常立尊(くにのとこたちのみこと)と号す。至って貴きを尊と曰ふ。自余(これよりあまり)を命と曰ふ。並に美挙等(ミコト)と訓(い)ふ也」(出典:日本書紀(720)神代上)
    2. 一般に、身分の高い人や目上の人に対して敬称として添え、または身分の高い人や目上の人をさす語。「…のみこと」の形で固有名詞に添えて接尾語的にも用いる。
      1. [初出の実例]「左太臣正二位石上尊右太臣正二位藤原尊」(出典:建多胡郡辨官符碑(上野多野郡吉井村字池所在)‐和銅四年(711)三月九日)
    3. 親愛の情をこめて相手をさす語。
      1. [初出の実例]「若草の 妻の美許登(ミコト) 事の語り言も こをば」(出典:古事記(712)上・歌謡)
  3. [ 2 ] 〘 代名詞詞 〙 ( 平安後期には、人を軽く見たり、からかったりした気持で用いる )
    1. 対称。おまえさん。貴様。あんた。
      1. [初出の実例]「白事(しれこと)なせそ、尊。此く道理を云聞せたらばこそ、後々には此の君達は不咲(わらは)ざらめ」(出典:今昔物語集(1120頃か)二八)
    2. 他称。お方。ひと。おひと。
      1. [初出の実例]「この尊は本より此く艷(えもいは)物狂とは知たれども」(出典:今昔物語集(1120頃か)二八)

そん【尊】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙
    1. 身分の上の人。目上の人。たっとぶべき人。また、仏。
      1. [初出の実例]「三処為尊。兄秩為長」(出典:勝鬘経義疏(611)十大受章)
    2. 中国で古代に用いた酒器。祭祀の礼に用いたもので、銅器の他、陶製、木製等もある。酒樽に似たもの。また、酒樽のこと。
      1. 尊<b>[ 一 ]</b><b>②</b>〈故宮博物院蔵〉
        [ 一 ]〈故宮博物院蔵〉
      2. [初出の実例]「山為屏障田園、待月茅檐酒満尊、野碓風伝烟外水、紡車火静樹間邨」(出典:寛斎先生遺稿(1821)四・八月廿三日翠屏詩屋小酌待月)
  2. [ 2 ] 〘 接尾語 〙 仏を数えるのに用いる。
    1. [初出の実例]「南方より光明赫奕(かくやく)たる観世音菩薩一尊(ソン)飛来りましまして」(出典:太平記(14C後)一六)
  3. [ 3 ] 〘 接頭語 〙 人に関する語の上に付き、深い敬意を添えて、相手、また相手方の人を指す。
    1. [初出の実例]「Son(ソン)は、ヨミはタットシで、尊敬すべきの意」(出典:ロドリゲス日本大文典(1604‐08))

とうとたふと【尊・貴】

  1. ( 形容詞「とうとい」の語幹 ) 尊いこと。
    1. [初出の実例]「あなあはれ 布当(ふたぎ)の原 いと貴(たふと) 大宮所」(出典:万葉集(8C後)六・一〇五〇)
    2. 「あらたうと青葉若葉の日の光」(出典:俳諧・奥の細道(1693‐94頃)日光)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「尊」の意味・わかりやすい解説


そん
zun

中国,殷・西周時代に用いられた青銅製の酒器。口がらっぱ状に開き,胴部がふくらむ筒形の器。胴には饕餮文,圏足には 夔鳳文,き竜文などの文様が施されている。殷代の土器で尊と呼ばれるものは一般に甕形の土器であるが,土器の尊に圏足がつけられた器形が,青銅製の尊の起源と考えられる。

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【酒器】より

…土器の出土品には甕,壺,坏(つき)(杯)など酒器として使用されたと推定されるさまざまなものがあるが,これらは酒にかぎらず一般の飲食器としても当然使用されていたであろう。古代中国の青銅器などに見られる爵(しやく),尊(そん)といった酒器が,なによりもまず祭祀のために用いられたことは,酒が神聖な飲料であったことからみて当然であり,今日の日本でも正月や結婚式の慶事に神酒を盛った銚子や坏など,神前の酒器で寿(ことほ)ぐのもその古制によることを示唆している。 現在では徳利を銚子と呼ぶことも多いが,徳利と銚子とはもともと別物であった。…

※「尊」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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