デジタル大辞泉
「尊」の意味・読み・例文・類語
み‐こと【▽尊/▽命】
《御言を発するお方の意から。また、「御事」の意とも》
[名]上代、神や人の呼び名の下につけた敬称。「…のみこと」の形で使う。「小碓の―」
「恨めしき妹の―の」〈万・七九四〉
[代]二人称の人代名詞。
㋐相手を敬っていう語。あなた。
「―勝ちたらば国を分かちて知らしめん」〈今昔・一六・一八〉
㋑相手を軽く見ていう語。おまえ。
「そもそも、―、なすべき官物、その員あり」〈今昔・二〇・三六〉
[補説]古事記の表記では「命」に統一、日本書紀では、至って尊いお方には「尊」、それ以外には「命」と使い分けている。
そん【尊】
[名]中国古代の酒器。一般に、アサガオ状に開いた口と膨らんだ胴、末広がりの台をもつ。
[接頭]人に関する語に付いて、相手または相手方の人を敬意を込めていうのに用いる。
「―夫人将に何処に行かんとするや」〈織田訳・花柳春話〉
[接尾]助数詞。仏を数えるのに用いる。「釈迦三尊」
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そん【尊】
[1] 〘名〙
①
身分の上の人。
目上の人。たっとぶべき人。また、仏。
※勝鬘経義疏(611)十大受章「三処為レ尊。兄秩為レ長」
② 中国で古代に用いた酒器。
祭祀の礼に用いたもので、銅器の他、
陶製、
木製等もある。
酒樽に似たもの。また、酒樽のこと。
※寛斎先生遺稿(1821)四・八月廿三日翠屏詩屋小酌待月「山為二屏障一護二田園一、待レ月茅檐酒満レ尊、野碓風伝烟外水、紡車火静樹間邨」
[2] 〘接尾〙 仏を数えるのに用いる。
※
太平記(14C後)一六「
南方より
光明赫奕(かくやく)たる観世音菩薩一尊
(ソン)飛来りましまして」
[3] 〘接頭〙 人に関する語の上に付き、深い敬意を添えて、相手、また相手方の人を指す。
※ロドリゲス日本大文典(1604‐08)「Son(ソン)は、ヨミはタットシで、尊敬すべきの意」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
尊
そん
zun
中国,殷・西周時代に用いられた青銅製の酒器。口がらっぱ状に開き,胴部がふくらむ筒形の器。胴には饕餮文,圏足には 夔鳳文,き竜文などの文様が施されている。殷代の土器で尊と呼ばれるものは一般に甕形の土器であるが,土器の尊に圏足がつけられた器形が,青銅製の尊の起源と考えられる。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
世界大百科事典(旧版)内の尊の言及
【酒器】より
…土器の出土品には甕,壺,坏(つき)(杯)など酒器として使用されたと推定されるさまざまなものがあるが,これらは酒にかぎらず一般の飲食器としても当然使用されていたであろう。古代中国の青銅器などに見られる爵(しやく),尊(そん)といった酒器が,なによりもまず祭祀のために用いられたことは,酒が神聖な飲料であったことからみて当然であり,今日の日本でも正月や結婚式の慶事に神酒を盛った銚子や坏など,神前の酒器で寿(ことほ)ぐのもその古制によることを示唆している。 現在では徳利を銚子と呼ぶことも多いが,徳利と銚子とはもともと別物であった。…
※「尊」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」