改訂新版 世界大百科事典 「小集団活動」の意味・わかりやすい解説
小集団活動 (しょうしゅうだんかつどう)
企業における経営参加の方法の一つで,おおむね10人以下の小集団を従業員に構成させるようにし,その自主的な共同活動を通じて労働意欲を高め,企業の目的を有効に達成しようとするものである。本来,小集団small groupとは,少人数のメンバーで対面接触による確かなコミュニケーションを重ね,目標を共有する継続的な活動を通じ,相互受容関係を深めていくものであると定義されるが,企業のなかで小集団活動が関心を高めている理由としては,このような小集団の性質にもとづき,(1)チーム効率を十分に発揮して生産性向上,経営の効率化に結びつけることができる,(2)従業員の意見や考え方が経営に反映され,働きがいを生みだすことができる,(3)小集団のなかで自己をふりかえり,相互啓発を促進することができる,などがあげられ,組織のニーズと個のニーズを統合する活動となっている。小集団活動は,伝統的な集団風土を背景に,経営トップ,管理・監督者,従業員間のコミュニケーションを徹底し,人をいかす職場活動として海外からも注目され,日本的経営の特徴の一つとなっている。なんらかのかたちで小集団活動をとり入れ,企業内コミュニケーションの改善,職場の活性化,仕事の効率化,従業員の能力開発などの有力な手段として役立てている企業は数多く,その内容もしだいに充実しつつある。
企業内のおもなサークル活動の流れには次のようなものがある。(1)QCサークル 製品の品質の維持と向上をはかる科学的な品質管理quality controlの手法をマスターするため,職長が中心となってつくられたのがQCサークルである。品質管理そのものはアメリカが発祥の地であるが,日本ではそれが伝統的な集団主義と結びつき,1962年,主要な企業で導入が始められて以来,年ごとに関心が高まった。70年ころから,製造現場だけでなく営業・企画・総務など非製造部門も含む全社的な品質管理,いわゆるTQC(total quality controlの略。総合的品質管理と訳される)の考え方が広まり,製造業のみでなく銀行など第3次産業でもQCサークルがつくられるようになった。統計技法を活用し,全部門が品質管理を理解し,日常的な業務の質の向上に努める。(2)ZD運動 アメリカのマーティン社がミサイルの製造にあたってよびかけたZD(zero defectsの略)計画をいちはやく日本電気がとり入れ,1965年から開始されたのがZD運動(まれに無欠点運動と訳す)である。従業員各自の注意とくふうにより仕事の欠陥を防止し製品やサービスの信頼性を高めるための活動で,ミスをなくすことは一人一人の努力で可能であると考え,許されないミスを防止するためにさまざまな技法を駆使している。以上のほか企業によっては提案グループ(提案制度),安全サークルなどの小集団活動が展開されている。そのなかには労働の〈人間化〉や職場レベルの参加といった自主管理活動をめざしたものも少なくなく,活動目的,推進方法・水準などは実にさまざまである。
執筆者:上田 利男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報