日本大百科全書(ニッポニカ) 「小1の壁」の意味・わかりやすい解説
小1の壁
しょういちのかべ
おもに、共働きやひとり親世帯において、子供の小学校入学を期に、仕事と育児の両立がむずかしくなること。親の退社時間まで子供を預けられる施設がみつからなくなったり、保護者の負担が増えたりすることにより、働き方を変えなければならないような問題が生じる。保育園在園中の子供は、夜間の延長保育を利用すれば、公立保育園などに朝の7時ごろから夜の19時過ぎまで預けることができ、その間の食事や間食、仮眠なども含めて子供の生活を委(ゆだ)ねることができる。しかし、小学校に入学すると、放課後に預けられる公的な学童保育施設(放課後児童クラブ)は、開所時間を18時までとしている所が多いため、保護者は勤務形態を変えざるをえなくなる。都市部では学童保育の利用希望者に施設の整備が追いついていないため、利用することさえできない家庭も数多く存在している。また、子供が小学生になると、職場の育児短時間勤務制度が適用されなくなることや、親の参加すべき学校行事が増加することなどにより、さらに負担が増えるという問題もある。
厚生労働省によれば、2014年(平成26)5月1日時点の学童保育(放課後児童クラブ)の登録児童は93万6452人で、1年前と比較して4万7000人あまり増加した。また、放課後児童クラブの数は2万6084か所で、1年前の約3%増となり、登録児童数、施設数とも過去最高であった。しかし、定員一杯のために放課後児童クラブの空きを待っている待機児童は9945人おり、これも過去最高であった。政府は2014年に閣議決定した経済財政運営と改革の基本方針、いわゆる骨太の方針で、男女がともに仕事と子育てを両立できる環境整備を最優先課題の一つとしている。2015年度より、原則としてすべての小学校区において、文部科学省の「放課後子ども教室」と、厚生労働省の「放課後児童クラブ」を連携させた総合的な放課後対策(「放課後子ども総合プラン」)を推進する予定である。
[編集部]