足関節が足底屈位で拘縮を生じた状態をいう。多くは背屈筋と底屈筋の牽引(けんいん)力のバランスの差によって生ずる。先天性と後天性に分けられるが、先天性尖足はまれである。
代表的なものは麻痺(まひ)性尖足と痙直(けいちょく)性尖足である。麻痺性尖足は腓骨(ひこつ)神経などの末梢(まっしょう)神経麻痺やポリオのほか、筋ジストロフィーなどの筋神経疾患によるものが多く、痙直性尖足は脳性小児麻痺や脳卒中後の片(へん)麻痺に伴ってみられる。
麻痺足に対しては良肢位固定装具を使って変形発生を予防することがたいせつである。尖足変形拘縮をおこしたものに対してはアキレス腱(けん)延長術や腱移行術などの手術療法が行われる。なお、先天性内反足にみられる尖足は、これに含めない。
[永井 隆]
足関節が底側に屈曲,拘縮して背側に屈曲できなくなった状態で,その原因はさまざまである。最も多いのは先天性内反足の尖足であるが,この場合の尖足変形は内反変形や内転変形などと組み合わされた形をとっている。麻痺性尖足は,ポリオ,二分脊椎(脊髄髄膜瘤),シャルコー=マリー=トゥース病,腓骨神経麻痺などの弛緩性麻痺により,背屈筋の筋力が低下または消失することにより生ずる。痙直性尖足は,脳性小児麻痺や脳卒中後の片麻痺などの痙性麻痺により,底屈筋の緊張が高まることによって生ずる。これらの尖足変形は,発病の初めには他動的に矯正できるが,後には軟部組織が短縮し,骨変形を生じ,尖足位に固定されるようになる。治療には,アキレス腱延長術,矯正骨切り術,腱の移行術などの手術的治療が,原因と病態に応じて行われる。
執筆者:吉川 靖三
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…正座してしびれがきれるのは,浅腓骨神経の一時的麻痺である。小児麻痺でよく侵されるのもこの神経で,特有の尖足(せんそく)を招来する。深腓骨神経は下腿と足背の伸筋群を支配する。…
※「尖足」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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