(読み)シ

デジタル大辞泉 「尸」の意味・読み・例文・類語

し【尸】[漢字項目]

[音]シ(呉)(漢) [訓]しかばね
人の死体。しかばね。「尸諫しかん
神の身代わり。かたしろ。「尸位

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精選版 日本国語大辞典 「尸」の意味・読み・例文・類語

かばね【尸・屍】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 死骸。死体。また、死体の骨。から。しかばね。むくろ。
    1. [初出の実例]「則ち夫(か)天稚彦の已に死(かく)れたることを知りて、乃ち疾風(はやち)を遣して、尸(カハネ)を挙げて天に致さしむ」(出典:日本書紀(720)神代下(水戸本訓))
  3. 死人のような状態になった者をののしっていう語。
    1. [初出の実例]「四人は聞て腹をたて、かく迄及ぶかばねして、其悪口はすいざんなり」(出典:浄瑠璃・源氏六条通(1708)二)
  4. しかばねかんむり(尸冠)」の別称。

尸の語誌

( 1 )古代語では、死骸を意味するもっとも代表的な語で、死体ばかりでなく遺骨を指すこともあった。「しにかばね」も古くからあったが、漢文訓読語として偏在した使われ方であった。
( 2 )中世に「からだ」「むくろ」「しかばね」が現われ、近世には「しにがら」「しにからだ」などが加わった。
( 3 )漢語では「屍骸」「遺骸」などが古いが、中世後期には「死骸」が一般化し、和語「かばね」の位置を奪った。

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普及版 字通 「尸」の読み・字形・画数・意味


3画

[字音]
[字訓] しかばね・かたしろ・つかさどる

[説文解字]
[甲骨文]
[金文]

[字形] 象形
屍体のたわる形。屍の初文。屍は尸と死とを合わせた字。〔説文〕八上に「陳(つら)ぬるなり。臥する形に象る」という。尸陳は後起の義。〔論語、郷党〕に「寢(い)ぬるに尸せず」というように、偃臥するとき、その姿勢を避けるべきものとされた。祭祀のとき、かたしろとなることを尸主という。〔礼記、郊特牲〕に「尸は像なり」とあり、祖の尸主には孫が代わってつとめた。それで祭祀を司ることを「尸(つかさど)る」という。

[訓義]
1. しかばね、むくろ、なきがら。
2. かたしろ、尸主、いはい。
3. つかさどる、つかさ。
4. さらす、つらねる、陣する。
5. かたしろとして、その位にある。無為、おこたる、なまける、形だけで実がない。

[古辞書の訓]
名義抄〕尸 カバネ・カバネサラス・ツラヌ・ツカサドル・ノリヰル・アルジ・ノス 〔字鏡集〕尸 シカバネ・ツラヌ・ノリヰル・アルジ・ツカサドル・ムサフル・カバネ・ノブ・トシ・ノス

[部首]
〔説文〕に居・展・尼・屍・屋・(層)など二十二字と〔新附〕の、〔玉〕に屎・など十四字を加える。居は人の踞する形、展は死者の衣中に呪器として(てん)を塡塞(てんそく)する形。尸には人に従うものと屋形に従うものとがあり、などは屋形に従うとみるべきである。

[声系]
〔説文〕に尸声として屍・履など四字を収める。履を尸声とするのは音が合わず、履はかたしろや祭祀関係者の用いるものであろう。儀礼の際には貴紳(せき)を用いた。

[語系]
尸・屍sjieiは同声。死sieiと声が近い。死は残骨を拝する形で、複葬の形式を示す。伸sjien、展tianも声義に通ずるところがあり、尸とは伸展葬を示す字である。

[熟語]
尸位尸解尸骸尸諫・尸官尸玩尸柩・尸居・尸君・尸骨・尸山・尸車尸襲・尸祝尸臣・尸身・尸素・尸宅・尸奪・尸虫・尸媚・尸盟・尸・尸利・尸霊・尸・尸禄
[下接語]
飲尸・尸・献尸・公尸・坐尸・載尸・三尸・送尸・賓尸・鞭尸・輿尸・礼尸

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