日本大百科全書(ニッポニカ) 「居住・移転の自由」の意味・わかりやすい解説
居住・移転の自由
きょじゅういてんのじゆう
人がいかなる場所にも任意に居住し、またそれを変更する自由をいう。各国の権利宣言、世界人権宣言(1948)に共通にみられ、日本でも、明治憲法(22条)、日本国憲法(22条1項)でこれを保障している。ただし、明治憲法では法律の範囲内においてこの自由が認められるにすぎず、また、日本国憲法においても「公共の福祉に反しない限り」という条件が付されている。居住の場所を変えることが移転であるから、居住の自由と移転の自由とは一体のものである。封建時代には、身分や職業によってこの自由は多くの制限下にあったが、近代になって、人が土地から解放されると、そういう制限が廃されるようになった。なお、外国に移住する自由(海外移住の自由)もこの自由に含まれるが、日本国憲法には別に規定されている(同条2項)。公共の福祉による制限の例としては、検疫法による検疫感染症(検疫伝染病)の患者の隔離、受刑者を刑務所に拘禁することなどがある。
[池田政章]
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