朝日日本歴史人物事典 「岩井半四郎(8代)」の解説
岩井半四郎(8代)
生年:文政12.10.2(1829.10.29)
幕末明治期の歌舞伎役者。7代目半四郎と,4代目瀬川菊之丞の次女きいとの子として,江戸住吉町に生まれる。幼名久次郎。天保3(1832)年に4歳で3代目岩井粂三郎として初舞台。2代目紫若を経て明治5(1872)年半四郎を襲名。芸風は消極的であったが,舞台姿は艶麗で美しく,明治前期の女形の最高位にあった。お家騒動のもとになる美貌の側室といった役が最も似合ったといわれる。日常もつつましく女性的に暮らすなど,江戸時代の女形の習俗を守り通した最後の人でもあった。この名跡は平成期の10代目におよぶ。<参考文献>伊原敏郎『明治演劇史』,竹柴其水「明治初年の女形」(『演芸画報』1920年10月号)
(石橋健一郎)
出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報