改訂新版 世界大百科事典 「岩石磁気」の意味・わかりやすい解説
岩石磁気 (がんせきじき)
rock magnetism
磁性鉱物を含む岩石のもつ磁気的現象のことで,主として岩石の残留磁気(または残留磁化)をさすことが多い。火山から噴出した溶岩が地表で冷えて固まるとき,地球磁場方向と平行な磁化が獲得されることが知られている。古代人が用いたたき火のあと,焼いた土器,かまどなどの磁化方向も当時の地磁気の方向を示している。また,湖底や海底に沈殿した土砂の中の磁気を帯びた粒子は,地球磁場の影響を受けて固化し,その時の磁場方向が固定される。もし過去の地球磁場方向の変遷がわかっていれば,測定した岩石の磁化方向と比較することによって,それが磁気を帯びた年代を推定できることになる。このように岩石の磁気を研究する分野を岩石磁気学,用いられる手法を岩石磁気学的手法と呼ぶ。岩石磁気研究では岩石のもつ磁化の性質が風化や変質によってどのような影響を受けるのか,岩石中の磁性鉱物が温度や圧力,外界の環境によってどのように変化するのかも調査の対象となっている。岩石の磁化強度は,強いものもあれば弱いものもあり,後の時代に付加される二次的な磁化成分もある。磁気を帯びた時の磁化方向を正しく推定するためには,岩石のもっている磁化が安定かどうかのテストが必要である。そのテスト法として交流磁場をかけて徐々に0までもっていく交流消磁,一定の温度まで加熱する熱消磁,液体窒素温度(-196℃)まで冷却する低温消磁,希塩酸などで磁性鉱物を溶かす化学消磁などの方法がある。磁化の強度,方向の測定計器には無定位磁力計,スピナー磁力計,液体ヘリウムを用いた超伝導磁力計などがある。
→古地磁気 →自然残留磁気
執筆者:西谷 忠師
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報