翻訳|island arc
大洋に面する側(前面)は海溝でふちどられ,背後(大陸側)に縁海を有する細長い島の列。一般に大洋側に突出した弧をなしているので,島弧または弧状列島とよばれる。海溝付近から陸の下へ向かって斜めに沈み込むサブダクション帯の上に位置し,それに沿う深発地震面と,島弧の地殻内に起こる浅い地震の存在によって特徴づけられている。海溝軸から陸側に約100km離れた線(火山前線)とその陸側に活火山の列が存在する。
島弧の地殻は海洋地殻に比べて厚く約30kmにおよぶ所が多い。地殻構造は大陸のそれに近い。しかし,火山列の下ではリソスフェア(岩石圏)の厚さは薄く,東北日本の日本海側などではモホロビチッチ不連続面のすぐ下にアセノスフェア(地震波低速度層)が顔を出しているようにみえる。
島弧は,東北日本,西南日本やフィリピン,ニュージーランド,スマトラ,ジャワのようにかなり大きい陸をもつものと,伊豆・小笠原・マリアナやトンガ,千島,アレウトなど,比較的小さい島々の列とに二分される。前者には安山岩,花コウ岩,流紋岩などケイ長質またはそれに近い中間型火成岩を産するが,後者はカルクアルカリ系統の玄武岩が主である。どちらも100km以上の深さまで沈み込んだ海洋リソスフェアの一部が溶けてマグマを生じたもので,前者ではそのマグマが分化し,元から存在する岩石と反応してさらにケイ長質になったと考えられる。
島弧の重力ブーゲー異常は一般に正で,特に火山前線よりも海側で最大になることが多い。東北日本では200mGalをこえる。中部日本山岳地帯は例外で,負のブーゲー異常を示すが,これは伊豆半島と本州中央部との衝突が進行中であることを反映すると考えられる。熱流量は火山前線とそのすぐ陸側で最大になる。
太平洋の東側にも,アメリカのオレゴン州,ワシントン州にセント・ヘレンズ火山を含む火山列が海岸にほぼ平行に存在する。また,メキシコからペルー,チリにかけても火山列がみられる。これらは背後に縁海をもたない以外あらゆる点で日本列島などと似ていて,広義の島弧であると考えられる。
フィリピン海の海底には九州・パラオ海嶺や大東海嶺,沖大東海嶺などの高まりの列が存在する。これらに沿っては大洋中央海嶺のような浅い地震の列も,島弧のような深発地震面もみられないが,島弧型のカルクアルカリ岩やケイ長質岩石が採集されており,モホロビチッチ不連続面の深さも海洋底よりも深い。フィリピン海の海底(西フィリピン海盆や四国海盆,パレスベラ海盆)が拡大した時に縁海の背後に取り残された古島弧remnant arcであろうとされている。日本海の大和堆,北大和堆も古島弧の一種である。
→日本列島
執筆者:小林 和男
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