家庭医学館 「巣状糸球体硬化症」の解説
そうじょうしきゅうたいこうかしょう【巣状糸球体硬化症 Focal and Segmental Glomerular Sclerosis】
巣状糸球体硬化症(FSGS)は、いくつかの糸球体の一部(巣状)、また、個々の糸球体の一部(分節状)が、硬化する病気です。
以前は、特別な原因がなく、このような病変がおこる場合にかぎってこの病名を使っていました。
しかし最近では、いろいろな原因によって巣状糸球体の硬化がおこることがわかってきたため、原因があるものについては、続発性(ぞくはつせい)とか二次性の巣状糸球体硬化症として分けるようになりました。
とくに原因がみられない場合は、現在では、特発性(とくはつせい)あるいは一次性の巣状糸球体硬化症といいます。
続発性のものは、原因によってさまざまな経過をとりますが、特発性のほうは、たいていの場合、大量のたんぱく尿がみられ、ネフローゼ症候群(「ネフローゼ症候群」)を示すことが多い病気です。
[検査と診断]
「特発性巣状糸球体硬化症の診断基準」に、特発性巣状糸球体硬化症を診断するときの基準を示しましたが、ふつうは全身のむくみ(浮腫(ふしゅ))などで急激に症状が現われ、しばしば大量のたんぱく尿や、かなりの程度の高脂血症(こうしけっしょう)をともないます。
この点で、微小変化型ネフローゼ症候群(腎臓(じんぞう)の組織検査をしても、ふつうの光学顕微鏡で観察したくらいでは異常がわからないタイプ)と区別するのがむずかしいこともあります。
ただし、特発性巣状糸球体硬化症では、微小変化型ネフローゼ症候群とちがって、血尿や高血圧が現われることが多く、アルブミンよりも大きなたんぱく質分子も尿中にもれ出てしまうことが特徴です。
[治療]
巣状糸球体硬化症は、ネフローゼ症候群を現わすことが多い病気ですが、その場合は、ネフローゼ症候群と同様の治療をします。
ただし、病状が、無症候性たんぱく尿・血尿症候群(「無症候性たんぱく尿/血尿症候群」)の状態でとどまることもあり、慢性腎炎症候群(「慢性腎炎症候群」)の状態になることもあります。これらの場合も、そのような病態にふさわしい治療をすることになります。
巣状糸球体硬化症では、腎臓のはたらきがしだいに失われていくことが多く、一般的に、10年後には腎臓の透析療法(「人工透析」)が必要な状態になることが多いといわれています。