光の干渉を利用することにより、透明試料などが観察できる顕微鏡。通常の顕微鏡では生体細胞のような透明なものはたいへんに見にくく、表面の微細な凹凸の検出などは困難である。試料を染色する手法もあるが、細胞などが死滅するおそれもある。このような透明試料は透過光または反射光の明るさには変化を与えず位相にのみ影響を与えるため、位相物体とよばれる。位相物体に対して干渉を利用し、位相の変化を明るさの変化に変えるくふうを加えた顕微鏡が干渉顕微鏡である。試料を通過した試料光と、マイケルソン干渉計、フレネルの複プリズムなどによりつくりだした参照光とを重ね合わせて干渉させるものがつくられている。また顕微鏡で測定する試料は一般的に小さいので、改めて別の参照光を用意せずに、通常の顕微鏡に位相差観察用の部品を取り付け、試料の周辺を通過する視野外の光路を利用して参照光をつくる方法も利用されている。これは位相差顕微鏡とよばれ、顕微鏡の回折理論を巧みに応用し、ゼロ次の回折光の位相のみを変化させて位相物体を観察できるようにしたものである。
[石黒浩三・久我隆弘]
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… 1950年代からは,直接光と回折光の波の位相のずれを明暗の差に変える位相差顕微鏡が普及し,生細胞の観察に利用され,とくに生細胞内での染色体,ミトコンドリア,ゴルジ装置などの研究に寄与した。その後さらに,位相差顕微鏡の欠点を補った微分干渉顕微鏡がつくられ,比較的厚い生材料の光学的断面の観察が可能となり,細胞の生理学的研究に用いられるようになっている。また,改良された光源と落射型集光装置をそなえた蛍光顕微鏡は,免疫学の成果を利用して,細胞内における特異的なタンパク質,核酸などの存在を観察することを可能とし,電子顕微鏡とともに細胞研究の重要な手法となっている。…
※「干渉顕微鏡」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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