精選版 日本国語大辞典 「干渉」の意味・読み・例文・類語
かん‐しょう ‥セフ【干渉】
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翻訳|interference
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静かな水面に二つの小石を投げ込むと,二つの波源からそれぞれ波が広がっていく。このとき水面の1点は,両方の波の影響を同時に受けて,それぞれの波の振動を重ね合わせた運動をする。このように,ある点に二つの波がくると,その点の変位は二つの波の変位を加え合わせたものになる。これを波の重ね合せの原理といい,この重ね合せの原理によって生ずる現象を波の干渉と呼ぶ。すなわち,一方の波の山(谷)と他方の波の山(谷)が重なった部分では,山(谷)は和の高さ(深さ)となり,合成波の振幅はそれぞれの波の振幅の和となる。逆に一方の波の山(谷)と他方の波の谷(山)が重なる部分では波は弱め合い,合成波の振幅は元の二つの波の振幅の差となる。二つ以上の波が重なり合うときにも干渉が生ずる。干渉現象は,波に共通する基本的な性質であり,水の波ばかりでなく,光や音,X線などでも生じ,音の干渉はうなりとして現れることはよく知られている。また回折も散乱波の干渉によって起こる現象である。
19世紀の初頭,T.ヤングは,この波の干渉とまったく同様な現象が光の場合にも存在することを発見した。ヤングの行った実験(ヤングの干渉実験)は,次のようなものである(図)。平行な単色光をスリットにあて,そのスリットからの円錐形に広がる光を,間隔の狭い二つのスリットにあてる。そして,二つのスリットを通った光をスクリーンにあてると,スクリーン上に明暗の縞模様ができる。この場合,二つのスリットを通る光は,つねに一定の位相差をもっているので,スクリーン上で二つのスリットからの距離の差が半波長の偶数倍であれば光波の山と山が重なり,半波長の奇数倍ならば山と谷とが重なることになる。この実験で得られる明暗の縞は,光の干渉を示しているもので,この縞を干渉縞interference fringeと呼ぶ。この実験で,単色光の代りに白色光を使うときには,波長によって強め合うところと弱め合うところが違うので,スクリーン上には色のついた帯が並ぶ。これが干渉によるスペクトルで,干渉色とも呼ばれる。ヤングのあと,いろいろの干渉実験が行われて,その結果として光が波と考えられるようになった。その一例として,A.A.マイケルソンの干渉実験がある。これは,光源から出た光を,45度に傾いている半透明鏡を用いて,半分を反射,半分を通り抜けるようにし,反射した光と透過した光をそれぞれ鏡で反射させて元の道をもどしてスクリーン上に重ねるもので,二つの光が通る距離の差が半波長の偶数倍のとき明るく,奇数倍のとき暗い干渉縞が生ずる(この方法による干渉計はマイケルソン干渉計と呼ばれている)。身近な干渉色の例としては,水面上の油膜やシャボン玉などの薄膜が色づいて見える現象があり,また干渉縞の観察にはニュートンリングもよく用いられる。
干渉には,光を分ける方法によって,波面分割,振幅分割および振動面分割による干渉がある。波面分割による干渉とは,点光源から出て広がっていく波面の2ヵ所またはそれ以上の部分をとり出し,異なる光路を通したあとに重ね合わせるもので,ヤングの干渉実験はこれに属する。振幅分割による干渉は,半透明鏡などを用い波面の同一のところの振幅を二つに分け,異なる光路を通したあと重ね合わせるもので,マイケルソンの干渉実験がこれに属する。振動面分割による干渉は,偏光の干渉と呼ばれるもので,平面偏光を結晶板に入れると結晶内で互いに直交した振動成分の異なる2成分に分かれ,それらを異なる光路を通したあとで検光子を介して重ね合わせる干渉方法である。また,干渉する光波の数によって,2光束干渉と多光束干渉に分けられる。ヤングやマイケルソンの干渉実験は2光束干渉であるが,回折格子に光をあてて,それからの反射光または透過光で生ずる干渉は多光束干渉である。
光の干渉はなかなか複雑である。光が波動であれば,つねに重ね合せの原理が適用され,これによって生ずる干渉現象もつねに存在するはずである。ところが,異なる光源から出た光は干渉縞を作らないことや,同じ光源から出た光を二つに分けて光路差を与えて干渉させると,光路差が大きくなるにつれて干渉縞が不明りょうになり,ついには干渉縞が生じなくなることが知られている。干渉縞を生じない場合二つの光はインコヒーレントincoherent(不可干渉)であるといい,一方,干渉縞を作るときはコヒーレントcoherent(可干渉)という。また後者の性質をコヒーレンスcoherence(可干渉性,あるいは干渉性)と呼ぶ。光が干渉することは光波の基本性質であるから,すべての光は干渉しなければならないのに,干渉する光とか干渉しない光とかいうのはおかしい。これは明らかに異なる意味の干渉という言葉を混用している。すなわち,単に干渉という場合の意味は,光の振幅を考え,二つの光をA,Bと表せば,これらを重ね合わせたものがA+Bとなるという純粋に理論的なものである。ところが,光で使用する受光器は,すべて強度の時間平均を与える自乗検波器であるので,干渉縞が観測されるというのは,合成振幅の自乗の時間平均値Iが,おのおのの強度の時間平均値の和(I1+I2)と異なるかどうかをいっているものである。すなわち,振幅の時間平均強度は,I=〈|A+B|2〉=〈|A|2〉+〈|B|2〉+〈AB*〉+〈A*B〉=I1+I2+〈AB*〉+〈A*B〉であるから(〈 〉は時間平均を表し,A*,B*はそれぞれAおよびBの複素共役量である),この式の第3,4項が0となるかどうかをいっているのである。第3,4項は二つの光の相互関係を表すもので,これを問題にすることがコヒーレンスについて論ずることを意味する。二つの光波A,Bが互いに相互関係がなく,第3,4項が0となる光をインコヒーレント光といい,干渉縞は生じない。二つの光が互いに密接な関係があり,第3,4項が高い値で存在する場合の光をコヒーレント光といい,鮮明度の高い干渉縞が生ずる。上記の二つの場合の中間の状態の光,すなわち二つの光が少し関係がある場合には,第3,4項が小さい値で存在し,鮮明度の劣化した干渉縞が生ずる。このような光を部分的コヒーレント光という。このように,光の場合には干渉ということと可干渉性との違いに注意しなければならない。なお,レーザーをコヒーレントな光という場合,可干渉性のほかに,位相のそろった波形が長く保たれることも含めていることが多い。
執筆者:朝倉 利光
→内政干渉
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…また,一般に帰化生物が定着する際には土着の生物との間に競争が起こると考えられている。 競争のうち,一方が直接または間接に相手の資源や要件の利用を妨げるのを干渉interferenceと呼び,資源や要件を相手より早く,または多く使ってしまうことによって競争相手の利用可能量に影響を与えるのを取り合いexploitationと呼んで区別する研究者もいるが,実際に両者を明確に区別するのはむずかしいことのほうが多い。また,生活に必須な資源や要件の獲得のために争う過程そのものを競争と呼ぶ立場や,争いの結果としてどちらかに害や不利益の生ずる時だけを競争と呼ぶ立場もある。…
…通信において,目的の信号以外の信号が混入し,通信の障害となる現象を一般に混信という。電話における漏話や無線通信の混信などが代表的である。漏話は,ワイヤケーブルなどを用いた信号伝送において,二つ以上のケーブル間の電磁的,あるいは静電的結合により,一つのケーブルの信号が他のケーブルに漏れ,相互に干渉を起こす現象である。妨害となる漏話信号の現れる端点に対応して,近端漏話,遠端漏話などの区別がなされる。無線通信においても,種々の原因により,受信したい送信局以外の電波が混入受信され,混信を起こすことがある。…
※「干渉」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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