平事件(読み)たいらじけん

改訂新版 世界大百科事典 「平事件」の意味・わかりやすい解説

平事件 (たいらじけん)

1949年6月30日に福島県平市(現,いわき市)で,日本共産党員や労働者などが8時間にわたって平市警察署占拠した事件。炭鉱労働者の窮状を訴えるため,警察から許可を受けて平駅前に設置した共産党の掲示板を,アメリカ軍政部の勧告市警察が交通妨害を理由に撤去を命じたことに端を発した。この日午後3時半ころから,共産党石城地区委員会の党員,矢郷炭鉱の労働者,在日朝鮮人連盟の朝鮮人などが掲示板撤去に抗議して警察署前に集まり,しだいに人数を増して約500名に達し,署長面会を求めて署内に入り,玄関に赤旗を立てて完全に占拠し,留置場で検挙者を解放した。市警察は県下の警察に応援を求めたが,午後11時半ころには群衆は解散した。吉田茂内閣の行政整理が始まり,労働争議が激化するなど社会的不安が背景にあった。この事件で157名が起訴され,一審は騒擾(そうじよう)罪の成立を認めなかったが,二審騒擾罪とし,11年半後の60年12月,最高裁上告棄却し最終的に105名の有罪が確定した。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「平事件」の意味・わかりやすい解説

平事件
たいらじけん

1949年(昭和24)6月30日、福島県平市警察署を日本共産党員や労働組合員など多数が占拠、署内で紛争を起こした事件。当初許可された共産党磐城(いわき)地区委員会の掲示板に対し市警が撤去命令を出したことが発端となり、群衆数百人が署に押しかけたのであるが、その背景には、ドッジ・ラインに基づき企業整備が進められる常磐(じょうばん)炭鉱地帯の資本・警察と従業員の対立関係があった。検察は事件に戦後初の騒乱罪を適用し157人を起訴。55年8月の一審は騒乱罪不成立としたが、58年6~7月の2審は成立を認めた。同判決は、散発した個々の偶発的暴行脅迫に群衆全体の意思の共同関係を認めるために「未必的共同意思」論を案出し論議をよんだが、60年12月最高裁はこれを支持し上告棄却、刑が確定した。

[荒川章二]

『上田誠吉著『国家の暴力と人民の権利』(1973・新日本出版社)』『田中二郎他編『戦後政治裁判史録 第一巻』(1980・第一法規出版)』

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百科事典マイペディア 「平事件」の意味・わかりやすい解説

平事件【たいらじけん】

1949年6月30日,福島県平市(現,いわき市)で起こった警察署占拠事件。この日,公務員・民間企業の人員整理に反対する労働者の抗議運動が福島県各都市で展開されていたが,米占領軍福島軍政部の勧告で市警察署はいったん許可した掲示板の撤去を命令した。これに抗議する日本共産党員,労働者などが警察署に入り,8時間にわたって占拠した157名が騒擾罪で起訴され,一審では騒擾罪は不成立,二審では成立。1960年12月最高裁は上告棄却,105名の有罪が確定した。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「平事件」の意味・わかりやすい解説

平事件
たいらじけん

日本共産党福島県石城地区委員会による平署占拠事件。平市 (現いわき市) 警察署長が共産党宣伝用の掲示板の撤去を命じたことから,同委員会は不当弾圧であるとして 1949年6月 30日午後同署に抗議,群衆 500人とともに同署を占拠,留置人を釈放,逆に警察官を留置場に監禁した。福島県警察当局は騒擾罪で 231人を逮捕,159人が起訴され,1審では騒擾罪は認められなかったが,2審の仙台高等裁判所は騒擾罪を適用,148人が有罪となった。 60年 12月8日最高裁判所は上告を棄却した。

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