胃の幽門部と十二指腸との間の部分をさす。幽門部は胃体(胃の大部分)に続く部分で、十二指腸に向かってしだいに細くなる管状の部分である。幽門部の胃体寄りは通常膨らんでいて、幽門洞とよび、壁も薄い。幽門洞からは長さ2~3センチメートルの細くなった幽門管が続き、幽門口によって十二指腸に開く。この幽門口のある部分が幽門である。幽門の位置は第1腰椎(ようつい)の高さで、そのすぐ右側にある。また、胃の大部分(6分の5)は体の正中線の左側(左下肋(かろく)部)にあるが、幽門部だけがその右側にある。幽門口の周囲では胃壁の筋層(3層からなる)の、とくに中層が発達して幽門括約筋(平滑筋)となり、幽門口を輪状に取り巻いている。幽門括約筋が異常に肥厚すると胃の内容物の通りが悪くなり、幽門狭窄(きょうさく)症をおこす。これは男児に比較的多くみられるものである。また、幽門部の小彎(しょうわん)側は癌(がん)の好発部位といわれている。幽門は、胃の強い蠕動(ぜんどう)運動によって収縮するほか、十二指腸がその内容物で広げられたり、また酸性内容が粘膜に触れたりすると閉じ、アルカリ性内容や水分が粘膜に触れた場合には開く。これらの運動は、いわゆる幽門反射によっている。
[嶋井和世]
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…後部には筋胃(砂囊)が形成され,厚い筋壁をそなえて硬い食物の破砕を行う。哺乳類の胃はU字形胃の噴門側が発達して前胃を形成し,単一の後胃の胃底部および幽門部はそれぞれ腺胃と筋胃に相当する。哺乳類で前胃と後胃の区別が明らかな場合はこれを複胃とよび,明らかでない場合は単胃とよぶ。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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