弓手(読み)ユンデ

デジタル大辞泉 「弓手」の意味・読み・例文・類語

ゆん‐で【弓手/左手】

《「ゆみて」の音変化》
弓を持つほうの手。左の手。⇔馬手めて
浪子の―をりて」〈蘆花不如帰
左の方。左。⇔馬手
たちまち―の畑路より、夫婦と見ゆる百姓二人」〈蘆花不如帰

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「弓手」の意味・わかりやすい解説

弓手
ゆんで

左手異称。弓を持つ手「ゆみて」の音便で、馬の手綱をとる右手を「馬手(めて)」というのに対す。転じてひだりて(左側)をいい、鎧(よろい)の右脇(わき)の草摺(くさずり)を「射向(いむき)の草摺」というのに対して、左脇のそれを「弓手の草摺」と称し、左側から体を後ろひねりにすることを「弓手捩(もじり)」などという。

 犬追物(いぬおうもの)では、左側に犬を受けてその犬の左を射ることで、「弓手横」(犬の左を射る)、「弓手切」(禁じ手。前を横切る犬を右から射る)などの用語がある。

[宇田敏彦]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内の弓手の言及

【賦役】より

… 宋代になると,郷村の民戸組織にともなう里正などの役が重要になり,職役(しよくえき)と呼ばれている。その内容は,徴税(里正,戸長,郷書手)や治安維持(耆長,弓手,壮丁)をはじめとし,官物の輸送(衙前)などにも当たった。また唐代の番役に相当する官庁の各種労務(承符,人力,手力,散人)も依然として存在した。…

【右と左】より

…日本文化の場合,いったい尚右なのかそれとも尚左なのかは,一概に論ずることはできないが,右優位を暗黙の前提としていることが多いようである。 なお,古くは右または右手を馬手(めて)(馬上で手綱を持つ手),左または左手を弓手(ゆんで)(弓を取る手)と呼んだ。例えば《保元物語》に剛弓を引く源為朝は〈弓手のかひな馬手に四寸のびて,矢づかを引く事世に越たり〉とある。…

※「弓手」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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