当知行(読み)とうちぎょう

精選版 日本国語大辞典 「当知行」の意味・読み・例文・類語

とう‐ちぎょう タウチギャウ【当知行】

〘名〙 中世土地などの不動産物権を所有していると主張する者が現実にその権利を行使していること。また、その所領。また権利の有無にかかわらず、現地実際押領支配していること、あるいはその者をさしていうこともある。
吾妻鏡‐養和元年(1181)八月二七日「彼当知行渋谷下郷所済乃貢等所免除也」

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「当知行」の解説

当知行
とうちぎょう

中世の所領・所職支配の概念不知行の対概念。権利の有無によらず,職を現実に知行している状態,またはそのための行為。中世では,競争相手がなく20年間当知行を実現すれば,正当な所有権が生じるという年紀法とよばれる慣習法があった。中世諸集団の自力救済権に由来するという見解近年では有力。鎌倉後期以後,公験(くげん)を重視する文書主義や,知行の由緒を重視する徳政の社会思潮が台頭するにともない,徐々に制限されるようになった。

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世界大百科事典(旧版)内の当知行の言及

【知行】より

…この時代には,近代法にあるような抽象的な所有権の観念がなく,ひとびとは〈○○職が何某の所有権に属する〉とか〈○○職について何某が所有権をもっている〉とかいういい方はせず,〈何某が○○職を知行する〉〈何某が知行する○○職〉と表現した。ある職の帰属をめぐって,現実の知行者=〈当知行〉者(A)と取り戻そうとする者=〈不知行〉者(B)との間に紛争が起きたとき,Bは〈Aの知行には由緒がなく,自分に知行すべき由緒がある〉という趣旨の請求をし,Aは〈自分の知行には由緒がある〉と反論して争い,裁判所は〈A(またはB)が知行すべきである〉という判決を下すのが一般的であった(年紀法)。ちなみに近代法においては,〈Aは(占有しているが)所有権者ではない,自分Bこそが所有権者である〉〈いや,自分Aこそが所有権者である〉という形の主張が対立することになる。…

※「当知行」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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