形・態(読み)なり

精選版 日本国語大辞典 「形・態」の意味・読み・例文・類語

なり【形・態】

[1] (動詞「なる(成)」の連用形の名詞化)
① できあがったかたち。形状。さまかたち。
書紀(720)雄略六年二月(前田本訓)「天皇泊瀬(はせ)の小野に遊びたまふ。山野体勢(ナリ)を観(みそなは)して」
衣服などを身につけた姿。身なり。服装。衣装。なりふり。
落窪(10C後)一「落窪をさしのぞいて見給へば、なりのいとあしくて、さすがに髪のいとうつくしげにてかかりてゐたるを、あはれとや見給ひけん」
③ からだのかたち。からだつき。
※説経節・をくり(御物絵巻)(17C中)一二「うけたまはれば、みづからは、なりとかたちが、よいときくほどに」
坊っちゃん(1906)〈夏目漱石〉一〇「身長(ナリ)は小さくっても喧嘩の本場で修業を積んだ兄さんだ」
④ 人が何かしている有様や、おかれた状態。かっこう
史記抄(1477)一四「ちゃっと病のなりを見て、やがて五蔵之輸を知るぞ」
⑤ 周囲の評判。外聞。きこえ。ていさい
※歌舞伎・和布苅神事(1773)五段「海女海士に惚れるが、なんで形(ナリ)が悪い」
⑥ 動詞の連体形、過去・完了の助動詞「た」の連体形、または体言に付いて、(…の姿の)まま、…のままの意を表わす。
※俳諧・俳諧古選(1763)一「蹈み倒す形りに花さく土おほね〈乃龍〉」
形容詞の連体形について、その状態に応じての意を表わす。
硝子戸の中(1915)〈夏目漱石〉一「いくら狭い世界の中でも狭いなりに事件が起って来る」
⑧ 動詞の連体形について、(…した)とたんに、…とすぐにの意を表わす。
※春泥(1928)〈久保田万太郎みぞれ「『何をしてゐるんだな、おい』みるなり田代はキメつけるやうにいった」
[2] 〘語素〙
① 動詞の連用形に付いて、…するまま、…するに従うさまの意を表わす。「いいなりになる」「曲りなりの成果」
※橋(1927)〈池谷信三郎〉八「行き過ぎなりに、チラと見た男の顔」
② 名詞に付いて、そのもの相応であるさまの意を表わす。「子供なりに考える」
※「山びこ学校」訪問記(1951)〈臼井吉見〉中野好夫氏に「かれらなりにつかんだ生きかたをつらぬく」
③ 名詞に付いて、…の形の意を表わす。「弓なりになる」
曾我物語(南北朝頃)一「わらひていづるを見れば、菩薩なりにして、色あさぐろく、たけは六尺二分」

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