待・俟(読み)まつ

精選版 日本国語大辞典 「待・俟」の意味・読み・例文・類語

ま・つ【待・俟】

〘他タ五(四)〙
① 人、時、物事などの到来や働きかけを予期し、期待して、その場にとどまってじっとしている。
古事記(712)下・歌謡「君が行き 日長くなりぬ 山たづの 迎へを行かむ 麻都(マツ)には麻多(マタ)じ」
伊勢物語(10C前)六〇「五月まつ花たちばなの香をかげばむかしの人の袖の香ぞする」
② 他の動きが、こちらの行為の及ぶまで停止する。行なおうとする行為、行なっている行為を停止させる。
※伊勢物語(10C前)五〇「又、をとこ、行く水と過ぐるよはひと散る花といづれまててふことを聞くらん」
③ 貯えておいて、後の用意にする。
※東大寺本新修往生伝保元三年点(1158)「銭を俟(マツ)者の比々たる、皆是なり」
④ (俟) よい結果が生ずるように、その事を頼りとする、その事に望みを持つ。また、その事を必要とする。
書紀(720)継体二四年二月(前田本訓)「但 其の人の各類を以て進むことを須(マツ)のみ」
⑤ その人の事情などを考えて応対する。もてなす。待遇する。
※黒い眼と茶色の目(1914)〈徳富蘆花〉二「悍馬の如く刎ねかへる一介の青書生国士の如く待(マ)った飯島先生の知遇に対して」
⑥ 碁、将棋相撲などで、いったん行為に及んでから、それを元の形にもどす。多く「まった」の形で用いる。
吾輩は猫である(1905‐06)〈夏目漱石〉一一「『這入って失敬仕り候。一寸此白をとって呉れ玉へ』『それも待つのかい』」
⑦ 将棋で、意識的に相手に攻めさせて有利な条件を作り出す。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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