待合(読み)マチアイ

デジタル大辞泉 「待合」の意味・読み・例文・類語

まち‐あい〔‐あひ〕【待(ち)合(い)】

待ち合わせること。また、その場所。
男女が密会すること。
茶の湯で、茶会での客どうしの待ち合わせや亭主迎え付けを待つのに使う場所。寄り付き。
待合茶屋まちあいぢゃや」の略。
待合室」の略。

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精選版 日本国語大辞典 「待合」の意味・読み・例文・類語

まち‐あい ‥あひ【待合】

〘名〙
① (━する) 事前に相談して時と場所を決め、他を待って一緒になること。また、その場所。待ち合わせ。
※舞正語磨(1658)上「地うたひも迷惑して、待あひも出来侍り」
② (━する) 特に、男女が待ち合わせること。密会すること。
人情本・春色辰巳園(1833‐35)四「文のたよりも待合(マチアヒ)も、幾たびとなく米八が、耳にも目にもかかりしゆゑ」
③ 茶会の時、客同士が待ち合わせたり、席入りの準備をしたりする場所。外露地に独立の建物として設けたり、住居の一部をあてたりする。寄付(よりつき)
随筆槐記‐享保一〇年(1725)八月一三日「福嶋が旅宿へ茶湯に成らせられしが、待合にて太輔、御迎に出られしに」
④ 江戸時代、路傍社寺境内で、湯茶を出して休息させた店。水茶屋。
当世書生気質(1885‐86)〈坪内逍遙〉一一「竟に田の次に誘はれて、ある待合(マチアヒ)に夜を明して」
泊客(1903)〈柳川春葉〉六「停車場へ着いたのは、発車に先立つこと二十分ばかり前であったが、待合には犇々(ひしひし)と人が埋めかけてゐる上へ」

まち‐あわ・す ‥あはす【待合】

[1] 〘他サ下二〙 ⇒まちあわせる(待合)
[2] 〘他サ五(四)〙 =まちあわせる(待合)
※俳諧・卯辰集(1691)上「種馬の駒待あはすあられ哉〈楚常〉」

まち‐あわせ ‥あはせ【待合】

〘名〙
① まちあわせること。
※俳諧・五元集(1747)拾遺「棹鹿やはせをに夢の待合」
人形浄瑠璃で、人形演技が長引く時に、その終わるのを待って太夫三味線方がその演奏を休止すること。

まち‐あわ・せる ‥あはせる【待合】

〘他サ下一〙 まちあは・す 〘他サ下二〙 まえもって時間や場所を定めておき、互いにそこで落ちあうようにする。また、人が来るのを待つ。
※虎明本狂言・宗論(室町末‐近世初)「つれを待合するはづじゃ程に」

まち‐あ・う ‥あふ【待合】

〘自ハ四〙 互いに待つ。また、人の来るのを待つ。
※人情本・英対暖語(1838)四「木戸に待合(マチア)ふ辻駕籠を、雇て乗るも」

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改訂新版 世界大百科事典 「待合」の意味・わかりやすい解説

待合 (まちあい)

露地における施設の一。腰掛,袴付(着)(はかまつき),寄付(よりつき)ともいう。《茶湯秘抄》によると〈路地に五畳敷のキヌヌキ有之ナリ〉とみえ,奈良の茶匠,松屋久行は待合のような部屋を設けていた。この衣脱(きぬぬき)は〈今更之様ニ申セ共,昔よりもありたるぞ〉とも誌(しる)されているところから,遅くとも村田宗珠武野紹鷗(しようおう)の時代より以前からあった施設であることが知られる。茶室に縁が付いていたころには,縁が腰掛の役割をしていたが,松屋久栄の露地では,縁側の前の庇(ひさし)の下に〈長五尺六寸,足フトサ一寸二分〉の床几を置いて腰掛待合に使われていた。このような床几がやがて造付けとなり,後の待合になったのであろう。そのころは二重露地,三重露地は形成されていなかったので,座敷の一室が待合にあてられたこともあったであろう。1587年(天正15)の利休伝書に〈路地に水打ちしまひたる時,中立する也。先へ出でたる人,腰掛の円座を配るべし〉とみえるので,腰掛は板張りであったことがわかる。中門を境に外露地と内露地とに分かれる二重露地が整うのは千利休からとも古田織部からともいわれるが,利休時代にはほぼ整っていたとみられる。露地の発展に伴い,外露地には外腰掛,下腹雪隠(したばらせつちん)が,内露地には内腰掛が設けられるようになった。客は外腰掛で連客を待ち合わせて亭主の迎付(むかえつけ)を待ち,内腰掛では中立ちをして再び席入りの合図を待つ。利休時代における待合の一例として,〈外腰掛ニ堂葺ト云テ四方棟ノ瓦葺有。六畳敷也。此所ハ相客来テ待合。又ハ装束改所也〉(《茶譜》)と誌されているが,形式や位置に特に定めはない。住居の一部が待合にあてられることもあり,炉や床の間を備えているものもある。
茶室
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待合 (まちあい)

貸席業としての待合は,江戸時代の待合茶屋を起源とする。待合茶屋は,商人の寄合いや旅人の送迎など,本来の待合せに利用する茶屋であったが,明治初年以後は花柳街における芸者との遊興場所として急成長した。これには,政治家や政商などが〈待合政治〉という熟語を生むほどに盛んに利用したことも見のがせず,待合における芸者の売春が公然の秘密であったのも,政治的圧力が介在したといわれる。現在は風俗営業の対象であるが,名称を料亭と変えている地方(東京都など)や,貸席,料理店に含めている地方もあって,概念は統一されていない。原則として待合は,芸者などの芸人を招いて客に遊興させる店で,調理設備をもたず飲食物は他から取り寄せることとし,貸席料のほかに飲食代や芸者の玉代(ぎよくだい)および売春料の一部をはねて収入とする。なお,江戸時代の売春仲介貸席業としては,中宿(なかやど),盆屋(ぼんや),船宿などがあった。
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百科事典マイペディア 「待合」の意味・わかりやすい解説

待合【まちあい】

(1)茶会で,客が待合せする所。寄付(よりつき),袴着(はかまつけ)とも。(2)待合茶屋の略。もとは貸席を業とした茶屋。明治以降芸妓をあげて遊興する場所として発展し,政治家などもしばしばこれを使用したから,〈待合政治〉という言葉も生まれた。
→関連項目揚屋

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「待合」の意味・わかりやすい解説

待合
まちあい

寄付 (よりつき) ともいう。茶会で客が待合せや着替えなど,席へのぞむ準備をするところ。外露地にある待合のことを腰掛待合といい,内露地にあるのを内腰掛といった。明治以降は待合茶屋の略称として用いられることが多い。

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