得・能(読み)え

精選版 日本国語大辞典 「得・能」の意味・読み・例文・類語

え【得・能】

〘副〙 可能の意を表わす。
① あとに肯定表現を伴って用いる。よく…できる。→えも
※続日本紀‐天平宝字四年(760)正月四日・宣命「知る所も無く、怯(つたな)く劣(をぢな)き押勝が、得(え)仕へ奉るべき官にはあらず」
② あとに否定や反語の表現を伴って用いる。とても…できない。否定表現を省略することもある。
万葉(8C後)四・五四三「しかすがに 黙然(もだ)も得(え)あらねば わが背子が 行きのまにまに 追はむとは 千たび思へど」
源氏(1001‐14頃)横笛「ふかき夜のあはればかりは聞きわけど琴よりほかにえやはひきける」
③ ②が固定したため、必ずしも「え」を必要としない、可能の意味をもつ表現の前にも強調的に用いることがある。
※虎寛本狂言・縄綯(室町末‐近世初)「山一つあなたで御ざらば、馬上でなくは得参られますまい」
[語誌]もともと単に可能の意を表わし、否定表現との呼応は徐々に慣習化して固定した。この流れが、現代関西方言の「よう…ん」に連なっている。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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